シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

バンク・ジョブ ②

johnfante2008-09-13

バンク・ジョブ』 11月公開予定


監督: ロジャー・ドナルドソン(『世界最速のインディアン』)
出演: ジェイソン・ステイサムサフロン・バロウズ
原題 The Bank Job 公式HP http://www.bankjob.jp/


無線を傍受した男


警察がどのように侵入に気づいたかというと、無線マニアのロバート・ローランズ(Robert Rowlands)の勲功があったからだ。
彼はベーカー街からそれほど離れていないウィンポール通り(Wimpole)に住んでいた。
ロバートは9月11日土曜日の午後11時近くに、オーストラリアにいる友人と無線でコンタクトをとろうと試みていた。
すると偶然、変な会話を傍受してしまった。
それは銀行強盗と屋上で見張り役をしている者との間で交わされている会話だった。強盗たちは、携帯無線電話(walkie-talkie)で、連絡をとりあっていたのだ。



無線を傍受したロバート・ローランズ

警察が動き出す


ロバートが警察に通報したが、警察は悪戯だろうと考えて、すぐにはそれを信じなかった。
警察はとりあえず会話を録音しておくように、とロバートに指示を出した。
午前2時。警察はようやく電波の発信源を追跡しようと、ラジオ探知器を載せたバンを呼ぶことにした。
しかし、残念なことに、休日で休んでいた警察のエンジニアがやってきた頃には、犯人たちの携帯無線電話での会話は終わっていた。
これでは発信源を突き止めようがなかった。



どの銀行が強盗にあっているのかを特定するのも難しかった。
警察はロバートが無線を傍受できたことから、銀行襲撃がウィンポール通りから10マイルの半径の範囲内で起こっていると推測した。
しかし、そのエリアは750もの銀行がひしめくロンドンの中心地であった。
警察は土曜の深夜から日曜日にかけて、それらの銀行をしらみ潰しに調べていった。


強盗団の逮捕


日曜日の午後。
警察はベーカー通りにあるロイズ銀行を訪れたが、金庫室のドアは無傷であり、侵入の形跡を見つけられなかった。
警察は侵入者たちが、まだ銀行の内側にいることに気づかなかったのだ。
強盗団は日曜のランチタイムの時間に逃走した。
銀行の警備部門のチーフは、すべてのアラームシステムは機能していたと主張している。



バンク・ジョブ』映画の冒頭(9分55秒)


そして、強盗事件が発覚したのは、週末が終わり、翌週の月曜日に銀行が開かれたときだった。
強盗団は15インチ(約37.5センチ)の穴を通って入ってきていた。
そこで金庫室に入ったのは女性または子供だったのではないか、と推測された
金庫室には「シャーロック・ホームズにこれを解決させてみろ」と、塗装スプレーで走り書きが残されていた。
この事件は「携帯無線電話強盗」として知られるようになった。
それはベーカー街の住人であるシャーロック・ホームズが解決した小説「赤毛連盟」の事件と手口が酷似していた。


Dノーティス発令


しかし、この事件では無数の疑問が残された。
2年後の1973年に、ジョージを含む4人の男たちが投獄された。
そして彼らは、この強盗事件と関連して有罪判決を下された。
この犯罪に対する世間の大きな関心にもかかわらず、盗品と犯行についての詳細は、Dノーティスが発令されたため、MI5(イギリス情報局保安部。イギリスの国内治安維持に責任を有する情報機関)と政府の上級官僚によって秘匿された。
イギリスの「ミラー誌」も、当時の編集者が上級官僚から直接「記事を掲載しないように」と言われたことを明らかにしている。


そして、強盗団の名前や、彼らがどのように逮捕されたのか、何年の刑が執行されたのか、一切が公表されなかった。
金庫室の貸金庫のなかにあった大部分の盗品も、決して戻ることはなかった。
その謎は30年以上、隠されたままだった。