シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

『初国知所之天皇』復活ロードショー

1/24(日)に、下記の上映にトークで登壇します。
(緊急事態宣言の影響で、上映もトークもオンラインになりました)

チケット購入は下記です
https://haramasato.zaiko.io/_item/334795

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2021年1月24日(日)『初国知所之天皇』復活ロードショー

  • date_range 01.24 (日) 10:30 ⇨ 01.24 (日) 22:30
  • 日本映画界が生んだ、最後の天才映画監督・原 將人の 伝説の代表作『初国知所之天皇
     自宅焼失というアクシデントで燃えてしまった伝説のフィルム『初国知所之天皇』が、 2020年12月に京都市主催のクラウドファンディングで復活した。イマジカラボに保管されたネガから、16㎜フィルム​ニュープリント、デジタルリマスター版が復活され、​Lumen galleryで​初御披露目される。『初国知所之天皇』の世界は、より透明感を帯び,​「​映画 とはなにか? ​」​という命題に寄り添いながら創造性​を​激しく​刺激する。

    復活ロードショーにおいて​『初国知所之天皇』は、激生ライブ上映・フィルム・デジタル・燃えたフィルム​​の​4パターンで​上映​され​る。​
    ​また、『初国知所之天皇』をよりご理解いただくために、トークショーを企画した。
    この上映会はLumengalleryで鑑賞できる会場チケット限定48席を販売するほか、世界各国へ向けてオンライン配信される。
    はじめて興味を持たれた方も、なつかしい方も、映画『初国知所之天皇』をお楽しみください!
                         
    ■上映プログラム
    ・Aプログラム  
           11:00~:『初国知所之天皇』16㎜ Filmニュープリント2面マルチ
           14:00~:『初国知所之天皇』初国完成47周年記念 原 將人 激生ライブ上映
           18:30~:『初国知所之天皇』デジタルリマスター版2面マルチ

    ・Bプログラム
           11:00~:『あなたにゐてほしい~SOAR~』 参考上映:『おかしさに彩られた悲しみのバラード 』
           13:30~:『初国知所之天皇』16㎜ Filmニュープリント 2面マルチ
           15:30~: 原 將人トークショーwith ゲスト
           16:30~: 燃えた『初国知所之天皇
           18:30~:『初国知所之天皇』デジタルリマスター版2面マルチ

    チケット料金:
    ・オンライン配信 :1,000円(税込) ※配信日を含む3日間。開始時刻から2日間のアーカイブ上映あり
    ・会   場  入 場 券 :1,500円(税込)  
    ・ラ イ ブ 上    映 :5,000円(税込) ・学割:3,000円(税込) (要学生証提示)
    ・会 場1日鑑賞券:Aプログラム:7000円(税込)Bプログラム:5000円(税込)
        ※チケットの購入・動画の視聴には電子チケット販売プラットフォームZAIKOへのアカウント登録が必要となります。​
        ※チケット代のほかに別途手数料が掛かります。
        ※配信のURLは購入したZAIKOアカウントのみで閲覧可能です。

    【映画監督 原  將人コメント】
    私は映画が好きで好きで、好きがこうじて、作りたくて作りたくて、高校の時、友人たちと作った映画が東京の映画祭でグランプリを獲った。でも、ちょっと優等生の作った映画のような気がしていた。数年後、ほんとうに撮りたい映画を求めて『初国知所之天皇』を撮った。京都から北海道、九州まで、日本という国を作った天皇を探しての旅だった。でも、カメラを回す、撮るという行為のなかに日本という国は出現した。だから終われなかった。最後に鹿児島で初めて映画を撮った夏に自殺してしまった少女に出会った。私は少女を追悼し、私は映画の力を信じてそこで映画を終えた。『初国』には私の映画での出会い、映画への情熱のすべてのつまった作品だ。それが火事で焼けてしまったのはつらかった。
    復活できてほんとうにうれしい。

    【上映会へのコメント:瀬々 敬久(映画監督)】
    『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を高校生の時に見て以来、8ミリで映画を撮り始めた。それほど原將人信者だった。大学生の頃、原將人全作品上映の企画をして上映会を行った。その大きな理由は、噂に高い『初国』が見たかったからだ。『初国』は遥かにその伝説を超えていた。映写機と見る者、その空間、それらが混然一体となったまさに映画体験だった。上映という行為でしか成しえない作品、それでしか享受できない感動。あれ以来、僕は『初国』以上の映画体験を未だに経験していない。
    瀬々敬久:映画監督『64ロクヨン』『最低。』『友罪』『楽園』『糸』

    【上映作品紹介】
    ・『初国完成47周年記念激生ライブ上映』
    『初国完成47周年記念激生ライブ​上映​』を、簡単に説明すると、生演奏付きの映画上映である。今年70歳になる原が、2台の16ミリ映写機から上映される映像に合わせて、上映会場でナレーションを読み上げ、歌をうたい、ピアノを弾く。『初国知所之天皇』の誕生から47年間ずっと変わらない、​原が貫き通す*ライブ映画*の上映スタイルであり、会場をまるごと映画空間へと昇華させる、映画体験である。原は、至高の仕方で、既成の映画概念を見事に突き破ってみせた。『初国知所之天皇』が、日本映画界において、伝説と称される所以である。クリエイターたちにも絶大なファンを持つ。観客は、映画を観ることを超え「​映画を体験する​」​のである。これだけのクオリティー、スタイルでのライブ上映は、世界においても、原にしかやれない。今回は、ふたりのミュージシャンを迎えてのスペシャルセッション​でお届けする​。

    ・『初国知所之天皇』4バージョン: 激生ライブ上映   /  16㎜ Filmニュープリント  /  デジタルリマスター   /   燃えた   /
    1970年代、国家と社会に全面的に異議を申し立てた全共闘運動が終焉した。当時、映画を志す22歳の原 將人は、既成の映画に対して全面的に異議を申し立て、国家を根底から考える 映画『初国知所之天皇』を製作した。8㎜と16㎜フィルムを併用し、2 台の映写機を切り替えながら自ら映写する8時間に及ぶ長編作品は、同世代、とりわけ映画を志す若者たちに熱狂的に支持され、伝説のフィルムと呼ばれるに至った。その 後、摩耗する8㎜を16㎜に引き伸ばした4時間のリフレイン版を、その20年後には4 時間を左右に切り分けた2時間の2面マルチバージョンが完成した。
    その25年後、2018年の猛暑の夏、自然発火の火事で、原のフィルムも、貴重な映画資料も、撮影機材も、ほぼすべて燃えた。火事から2年後の2020年、京都市主催のクラウドファンディングを介し支援者の力を得て、イマジカラボに保管されていた『初国知所之天皇』のネガからデジタルリマスター版、2面マルチバー ジョン16㎜フィルムニュープリントがリプリントされ​た。

    ・『燃えた初国知所之天皇』​
    幾度となく上映されてきた『初国知所之天皇』の16㎜フィルム​は、​火事のアクシデントを耐え抜き、冒頭5分間以外、​奇跡的に映写機にかかる状態で燃え尽きることがなかった。​しかも、自然現象である火事の炎によって、人の手で作ることのできる限界を超えた妖艶な美しい色を与えられたのだ。映写機からリズミカルに投射されるこの神秘的な​映像​を観れば、魂は静かに揺さぶられ、不思議な感動を沸き起こさずにはいられないだろう。

    ・『おかしさに彩られた悲しみのバラード』 [参考上映]      ※著作権の関係上、会場での参考上映のみ。
    原が高校2年の春休みに級友たちと作った16㎜フィルムによる短編。1学期、2学期と 授業をさ​ぼって映画館に通いつめていた原は、3学期になると急に出席率かよくなっ た。​ど​うしても映画が撮りたかった。授業中にシナリオを友人たちに回し読みをしてもらっていたからだ。『黄金時代'68』という社会派の脚本だったが、甘い! 甘い! と先鋭的な友人たちに猛反対され、​原は​行き詰まった。だが、 それを劇中劇のように入れ子構造にすれば、自分の構想に近い社会派になることに気付き、春休み​に​ロケ場所だけ決めて​、​その場でシナリオを書いて撮っていった。その躍動感の充満する処女作。

    ・『あなたにゐてほしい~SOAR~』 
    冒頭に​、​昭和天皇が登場する。昭和の山村を舞台にした作品であるが、そうではない。戦死したフィアンセを待つ悲恋の物語であるが、そうではない。『あなたにゐてほしい~SOAR~』を見終えたあと観客は「一体全体なんだったの か?」心地よく深い混乱に包まれるであろう。原は、劇映画という括りの中で、ついに独自の世界を構築したのだ。美しい映像と音楽が溢れる原ワールドに身を置き、ゆっくり吟味して欲しい。ゴダールか? フェリーニか? そうではない。展開されるのは、純粋な原 將 人の映画哲学なのである。またある意味『初国知所之天皇』と並んで天皇制を語った系列にも属する。初国復活ロードショーにおいて、処女作『おかしさに彩られた悲しみのバラード』とプログラムに組み込まれた所以である。鈴木清順監督の最後の映画出演作ともなった。