シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

アルカトラズからの脱出 ②

johnfante2008-02-29

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主犯フランク・モリス


アルカトラズ刑務所で発生した14件の脱走劇のうちで、最も謎に包まれているのは、フランク・リー・モリスとアングリン兄弟の3人の脱走劇である。
行方不明者5人のうちの3人が、このフランク・モリスとアングリン兄弟である。


1960年1月20日、銀行強盗により14年の懲役刑で収監されていたモリスは、アルカトラズ連邦刑務所に護送された。
そのときに付けられた囚人番号は「AZ1441」。
頭脳優秀なことで知られるモリスは、前にいたアトランタの刑務所など米国各州の刑務所で何度も脱走を企てていた常習犯。
そのあげくに、脱走不可能といわれるこの刑務所に送り込まれた、札付きのワルだった。


1926年にワシントンD.C.に生まれ、13歳で、初犯で逮捕され、10代後半の間に何度も麻薬所持や強盗容疑で捕まっていた大人になると、より大きな犯罪を犯すようになった。
モリスは133という高い知能指数(IQは平均値が100、最高値は160)の持ち主でもあり、何度も脱獄に成功していた。



「アルカトラズ」の歴史ドキュメント


脱獄計画


凶悪犯ばかりが収容されているこの刑務所は、所長の下で厳重な警備体制がとられていた。
1日に12回も行われる点呼など。
もし、警備の裏をかいて脱出が成功しても、行く手にはサンフランシスコ湾が横たわる。
潮の流れが早く、冷水のため、泳ぎきるのは不可能に近い。
知能指数のきわめて高い新入りのモリスは、所長に特に目をつけられ、警告を受けていた。
モリスはアルカトラズに着いてすぐに、脱出方法を考えはじめた。
独房の換気扇のまわりのコンクリートが腐食している、と囚人仲間から聞いた。
60年代には、アルカトラズの建物の老朽化が激しくなっていた。
海水が逆流し、刑務所の建物を腐食させていたのだ。


アルカトラズの建物を建てたとき、当局は重大な決定をした。
節約のために、トイレの水に海水を使うことにしたのだ。
それが間違いだった。
時間の経過とともに塩水はパイプを錆びつかせ、コンクリート内に浸透した。
結果として、塩水はコンクリート内の鉄筋を腐食させた。
鉄筋が緩むと、コンクリートはちょっとした衝撃でも、こなごな砕け落ちてしまう。
そして、もう一つのまちがいは、節約のためにコンクリートにレンガを混ぜて使っていたことだ。
これがコンクリートの強度をさらに弱めた。


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脱獄を決意


モリスは新入りとして他の囚人にも目をつけられ、殴り合いの乱闘騒動を起こした。
囚人たちが最も恐れるD棟の独房は、24時間暗闇になっており、そこに放り込まれた囚人は精神的なダメージを受ける。
モリスもそこへ放り込まれた。
元の独房に戻ってきたモリスは、隣の牢に入ってきたアレン・ウェストという話好きの男と知り合った。


ある日、モリスは食堂で見知った顔と出会った。
別の刑務所でいっしょだったジョン・アングリンとクラレンス・アングリンの兄弟で、彼らも何度も脱走を試みたためアルカトラズに送られてきたのだった。
それまで、秘かに脱走計画をたてていたモリスは、2人の顔を見ていよいよ実行に移す決心を固めた。