シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

80年代アメリカ映画100

johnfante2012-02-20

80年代アメリカ映画100 (アメリカ映画100シリーズ)


献本を頂いてから、時おり開いてはつまみ読みして、長い間楽しませてもらった映画本。
80年代はまだ少年時代だったので、本気で映画を見始めたのは90年代に入ってからだった。
だから、80年代のアメリカ映画には、何となく「浮かれた時代だったのではないか」と偏見を持っていた。
しかし、ここに挙げられた100本の映画を考え直すと、途轍もなく多様性に満ちた映画の時代だったことがわかる。



本書を読むと、確かに80年代はマイケル・チミノの壮大な失敗作『天国の門』とウォーレン・ビーティの『レッズ』で明けたような気がしてくる。
また、スパイク・リーの『ドゥ・ザ・ライトシング』とガス・ヴァン・サントの『ドラッグストア・カウボーイ』で80年代が閉じて、90年代に突入したような気がしてくるから不思議だ。
当時はよく理解されていなかったポール・バーホーヴェンの『ロボコップ』の真意や、リチャード・エフルマンのカルト映画『フォービデン・ゾーン』なんか取り上げられているのも楽しい。


言ってしまえば、本書もまた2011年時点での80年代アメリカ映画の読解という限界を持つのだが、何十年かに1回こういう映画本を作って読み比べるのもいいかもしれない。
サイバーパンクとSF映画の台頭、MTVと映画の関係、NYインディーズなど、80年代のアメリカ映画もなかなか捨てたものではない。
本書の唯一の欠点は、読んでいる途中でDVDを借りにビデオ店に行きたくなってしまうことだ。
今年は80年代アメリカ映画を、ブルーレイとDVDで総ざらいするしかないと諦めている。