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最後の手紙
71年3月、ロサンゼルスの「タイムズ」紙に手紙が届いた。こんな書き出しだった。
「制服の連中がおれをつかまえる気なら、尻の穴をきゅっとひきしめてかかってこい」
そして、こんな風に終わっていた。「おれがこれを『タイムズ』に出した理由が分かるか。お前んとこなら他と違って、裏のページで小さく扱うようなこともないからよ」
丸の十字の署名があり、数字の17と+の符号が続けてあった。
74年に入って、サンフランシスコ警察にゾディアックから手紙が送られてきた。
それによれば、彼は今までに37人を殺しており、新聞でもっと大きく扱わなければ「なにかすさまじいことをやらかす」と述べていた。警察の調べで、これが以前の手紙と同じ筆跡だと判明した。
78年には、サンフランシスコの「クロニクル」紙に手紙が届いた。これが最後の手紙だと考えられている。
「おれはゾディアックだ」で始まる短い手紙で、差出人は捜査官のデイヴィッド・トスチ(David Toschi)を名指し、嘲弄している。また、手紙の最後には「おれについての映画がいつ作られるか待っている。誰かおれの役を演じるのか」と書いている。
その後、ゾディアックは忽然と姿を消してしまった。
有力な容疑者
何年にもわたり、警察が2500人以上の容疑者をあたったなかで、浮上したのはアーサー・アレンである。彼は、もっとも疑わしい容疑者として取調べを受けてきた。もっともゾディアックらしき男として有名。
アレンは25歳のときに名誉除隊した元海軍兵士で、いつも車に銃を置いていた。周囲からは変人として知られていた。幼児性愛者であったために仕事が見つからず、友人を失い、治療のために州立病院へ入院した経歴もある。
アレンの長年の友人で、カリフォルニア南部に住むドナルド・チェイニーの証言により、容疑者として浮上した。チェイニーは刑事に次のように話している。
68年の12月に地下室で、気晴らしに人殺しをしようという仮定の話をしていたとき、アレンはいかに「恋人の小道」で殺人をくり返すか、その方法についてチェイニーに詳しく話して聞かせた。
また、スクールバスのタイヤを先に撃ち、子供たち(「little darlings」という言い方が、アレンとゾディアックとで全く同じだった)を狙い撃ちする方法についても話した。
アレンは日頃から警察官になりたいと良く言っていた。これは被害者の証言で「警官のように車を停めて、懐中電灯を当てたこと」とも一致する。
状況証拠的にアレンのことを、ゾディアックだと証言する者は他にも複数名いた。
容疑者の死
72年9月から警察はアーサー・アレンを調べていたが、指紋もハンドライティングも証拠となるまでには至らなかった。
しかし、アレンは92年に58歳で病死してしまう。
FBIの捜査官たちは、彼がゾディアックだと決定づけるために、その後も最新のDNA検査を使って証明しようとしている。
手紙に残された痕跡などと、アレンのDNAのプロファイルを一致づける捜査が行われているが、いまだにそれを証拠づけるまでには至っていない。
ゾディアックと名乗った犯人が望んだように、彼が引き起こした残虐な事件は次々と映画化されている…。
《参照》
Crime Libraly、『現代殺人百科』など
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