シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

ゾディアック ②

johnfante2007-05-04

ゾディアック~十二宮の殺人~ [DVD]

フード姿で現れる


9月27日、今度はナパ警察署に、どら声の男から電話があった。
「ベリエッサ湖の岸辺で2人を殺した」という。警察が現場に向かうと、血だらけの男女が倒れていた。2人とも刺し傷だった。近くの車の中に、ゾディアックのマーク付きのメモ紙が見つかった。
犠牲者はセシリア・シェパードとブライアン・ハートネルで、いずれも大学生だった。ハートネルの方はまだ生きており、ことの経緯を次のように語った。


フードをかぶった男が近づいてきた。フードには目のところに切り込みがあり、白でゾディアックの印がつけてあった。男はピストルとナイフを構えて、金を出せと言った。
フードの切り込みから黒っぽいサングラスと、薄茶色の髪が見えた。「太鼓腹」だった。男は自分たち2人を縛って言った。
「おれはな、お前たちみたいな奴を刺すんだ」
それから、その通りに何回もナイフで刺した。
男がナパ警察署への連絡に使った公衆電話は、署のすぐ近くにあった。警察はここで3種類の指紋を採取した。しかし、犯人の手がかりにはならなかった。

タクシー運転手殺害


その2週間後の10月11日、ゾディアックはまた凶行におよんだ。
サンフランシスコのノッブ・ヒルで、タクシー運転手の後頭部を撃ったのだ。犠牲者はポール・スタイン。銃は9ミリのルーガーだった。
殺人者は運転手のシャツの一部を切り裂いて持ち去った。銃弾は、ダーレン・フェリン殺しに使われたのと、同じ銃から発射されたことが判明した。


翌日、サンフランシスコの「クロニクル」紙に、ゾディアックから手紙が届いた。血がべったり付いたシャツの切れ端が同封されていた。
差出人は、警察の手際の悪さを叱り、次のように続けていた。
「小学校の子供はいい目標だよ。そのうち午前中にでも、スクールバスにちょっかい出そうかな。まずタイヤをぶち抜く。チビたちがぴょんぴょん出てくる。それを狙い撃ちだ」。
タクシー運転手殺しが、今のところ分かっている、ゾディアックの最後の犯行である。


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テレビ番組に電話出演


10月21日、ゾディアックと称する人間から、オークランド警察署に電話がかかってきて、次のような意味のことを告げた。
「有名な弁護士の先生がついてくれるんだったら、自首してもいい。たとえば、F・リー・ペイリーとかメルビン・ベリーなどだ。また、早朝のテレビのトーク・ショーに、自分のために時間をとれ」と要求した。
早速、警察はテレビに時間をとり、弁護士も用意し電話を待った。テレビ局からも一般に事前に予告された。この地区の数千人の視聴者が、午前6時45分からはじまる「ジム・ダンバー・ショー」にチャンネルを合わせた。


7時41分に、少年のようなソフトな声でテレビ局に電話かかり、ゾディアックだと名乗った。
電話の主は15回電話をかけなおして、殺人と自分が抱えている頭痛について、メルビン・ベリー弁護士に語りかけた。彼は最後に、ダリー・シティのストアの前で同弁護士と会うことに同意して電話を終えた。しかし、姿は現さなかった。
ゾディアックの声を聞いたことがある3人、すなわち、被害者のブライアン・ハートネルと、女性の電話交換手と、パトロールの警官は、テレビにかかってきた電話の声は、彼らが聞いた殺人者の声とまるで似ていないと言った。


このショーの2ヵ月後、ペリー弁護士に手紙が届いた。筆跡はゾディアックのものと確認された。例のタクシー運転手のシャツの切れ端が同封されていた。
手紙には、今まで8人殺したが、近く9人目を殺すと書いてあった。テレビのショーに電話をかけてきた男が偽者であれば、この手紙でゾディアック本人が何か書いたはずである。


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