シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

映画芸術 2010年8月号

johnfante2010-08-12

映画芸術 2010年 08月号 [雑誌]

映画芸術 2010年 08月号 [雑誌]


映画芸術」の夏号が発売されました。
巻頭特集は瀬々敬久監督の4時間半の『ヘヴンズ ストーリー』。
山口県光市の母子殺人事件をベースにした映画で、10月公開予定ですが、いち早くインタビューと、瀬々映画の脚本を長らく書いてきた井土紀州さんによる批評が掲載されています。
長尺の映画を「大作」と呼ぶ傾向があるが、長い映画でも「大作」ではない映画は数多くある。それにしても、長いということはそれだけで小説でも映画でも一つの価値だと思う。



ヘヴンズ ストーリー


若松孝二監督の『キャタピラー』を論じているのは、晏妮さんによる「性的倒錯としての反戦」という批評。
若松映画のなかにおける性行為と政治的暴力の関係を読み解き、寺島しのぶ扮するシゲ子のサド的な性質に、戦後の女性像と時代考証のズレを指摘するスリリングな論考。



アメリカ―戦争する国の人びと―』


特集「わが内なるアメリカ」は映芸らしいというか、映画雑誌では映芸にしかできない内容の特集でおもしろい。
特に藤本幸久の『アメリカ―戦争する国の人びと―』(こちらは8時間のドキュメンタリー)をめぐり、長谷川和彦、藤本幸久、寺脇研といった世代も出自も微妙に噛み合わない三人が、噛み合わないままに各自のアメリカを語っていくやりとりが何とも興味深い。
長谷川和彦氏が広島で胎内被爆した経験と、『太陽を盗んだ男』の関係は大きなトピックだと思ったが、誰かが既に論じているのだろうか。