映画評論家の佐藤重臣が、60年代後半にオットー・ミュールの実験映画を東京で特集上映したことがあるそうだ。
そのときはアングラ映画の文脈で紹介され、無修正でエロ・グロ趣味ということが話題になり、毎日立ち見が出るほど観客が詰め寄せたという。
ウィーン・アクショニズムの芸術家オットー・ミュールは、現代アートではハプニングと近接性のある「Aktion」と呼ばれる、一種のパフォーマンスを62年からはじめた。
そのショッキングでスキャンダラスな内容は、今見ても十分に衝撃的で、幸いなことに実験映画として映像が残されている。
「ミリタリー・トレーニング」(1967/3分31秒) オットー・ミュール
後半でカラーになってからのグロテスクさ、といったらない。確かにライヴで見たい種類のものだ。
様々な色の絵の具を、横になった人の顔に塗りつけているだけなのだが、何か人体を解体しているようなグロさに見えてくるのが不思議だ。
ドゥシャン・マカヴェイエフの『スウィート・ムービー』にも、コミューンのメンバー役としてちらっと出演しているらしい。
無論、2010年現在も85歳で現役の作家なのだが、1991年には性的な犯罪に関わったとして、6年半刑務所に入れられていた。
刑務所を出た後は、ポルトガルにある実験的なコミューンに移住して、パーキンソン病と戦いながら現在も様々な活動をしているようだ。