シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

アルベール・ラモリス

johnfante2010-08-22

ある仕事で必要になり、国立近代美術館フィルムセンターの午前中に、試写室を借りて松本俊夫さんの処女作『銀輪』(55)を再見しました。
松本さんが大学卒業後に入った新理研映画で、自転車工業会(JETRO)の海外用PR映画として、制作した作品です。
本を見ていた少年が、夢のなかで憧れの自転車に乗るといった内容ですが、そこにあらゆる実験的な映像を詰め込んでいく、一種のシネポエムです。



『赤い風船』『白い馬』予告編 アルベール・ラモリス


『銀輪』を見ていて思い出したのが、早世してしまったアルベール・ラモリスの代表的なシネ・ポエム『白い馬』(52)、『赤い風船』(56)です。
『白い馬』は、大人たちが手なずけられずに手を焼いている白い馬を見て、少年が何とか乗ってやろうとする映画。
少年と白い馬のあいだに生まれてくる、見えない絆を映像の喚起力によって見せいきます。
少年というのがポイントです。
少年が乗っている憧れの白い馬は、松本俊夫の『銀輪』で少年が乗るピカピカの自転車ですね。


そういえばインタビューのときもラモリスの話をしていたし、松本さんの著書『映像と発見』にもアルベール・ラモリスについて書いた文章があります。
松本俊夫といえども、最初は先人の模倣から、自分のスタイルを作っていったのですね。