シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

イースタン・プロミス

johnfante2008-06-13

Alix Lambert's the Mark of Cain [DVD] [Import]

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イースタン・プロミス


雑誌「映画芸術」のHPに、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『イースタン・プロミス』の映画評を書きました。
興味のある方は、ぜひのぞいてみて下さい。


http://eigageijutsu.com/article/100398435.html


アメリカのドキュメンタリー映画作家のアリックス・ランバート(Alix Lambert)という人がいるのですが、彼女が撮ったロシアの刑務所における入れ墨文化に関するドキュメンタリーが秀逸です。
これをたまたまテレビで見たヴィゴ・モーテンセンがクローネンバーグに見せて、『イースタン・プロミス』のなかでタトゥーが大きく取り上げられることになったようです。
アリックス・ランバートはシアトル出身で、グランジ世代の女性映画作家です。


ロシアの入れ墨文化


ロシアの刑務所とスターリン時代の強制収容所において、いつ頃からボディアートの風習が見られるようになったかはわかっていません。
しかし、1920年代には、ソヴィエトの研究者がこのアンダーグラウンドな活動を発見しています。



ロシアの刑務所人口は、世界で最も多いといわれています。
1960年代半ばから80年代にかけて、3500万人もの人が投獄されました。
そのうちの2000万人から3000万人がタトゥーを施されていたという。自分からタトゥーを入れる者もあれば、懲罰として軽蔑の意味を含めて入れられる場合もあり、受刑者の身体を練習台として使うときもあったといいます。



そんな受刑者たちは、タトゥーを通してコミュニケーションを取っていました。
体に刻まれたタトゥーを見れば、犯した罪や服役期間、性的な嗜好など、さまざまなことがわかるのです。
いわば身体に刻みこまれた履歴書のようなものです。
ボディアートは単純な装飾以上のものであり、その模様はその囚人のバックグラウンドと、刑務所や収容所という複雑な社会システムにおけるランクをはっきりと示すのです。


Russian Prison Tattoos: Codes of Authority, Domination, and Struggle

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さらに詳しいことを知りたい方には、アリックスによる写真集が出ています。



イースタン・プロミス [DVD]

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イースタン・プロミス
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:スティーヴ・ナイト
音楽:ハワード・ショア
出演:ヴィゴ・モーテンセンナオミ・ワッツヴァンサン・カッセルイエジー・スコリモフスキー

2007年/イギリス=カナダ=アメリカ/配給:日活/100分
原題:Eastern Promises
6月14日(土)からシャンテ シネ、シネ・リーブル池袋ほかにて公開
公式サイト http://www.easternpromise.jp/