シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

バグズ・ワールド ①

johnfante2008-07-03


映画『バグズ・ワールド』
監督フィリップ・カルデロンによるドキュメンタリー・ドラマ
6月28日より 全国ロードショー
公式HP http://www.cinemacafe.net/official/bugsworld/

虫の世界


目を凝らさなければ見ることのできない昆虫たちの小さな世界。
だが、そこでは日夜、驚くほど壮大でドラマチックな物語が繰り広げられている。


主役は、オオキノコシロアリ(学名マクロテルメス・ベリコサス)とサスライアリ(学名ドリルス・ニグリカンス)。
要塞のような巨大な巣に一大帝国を築くオオキノコシロアリと、集団で放浪しながら行く手にあるものを食い尽す凶暴なサスライアリ。
そのまったく生態の違う2種の昆虫が激烈な死闘を繰り広げる。

オオキノコシロアリ


頑丈 定住型 平和主義
食糧:枯れ木、菌類、木の皮
危機管理:危険から避けるため即座に封鎖篭城


西アフリカの中央サバンナの奥地に数メートルにも及ぶ巨大なオオキノコシロアリの塚が点在している。
それぞれの塚では一匹の女王アリを中心に数百万匹のシロアリたちが、秩序正しく管理された帝国を築き、外敵の攻撃を防ぐための完全防御態勢が敷かれている。
彼らには視力が無いため光を嫌い、時には6メートルにもなるタワー状の要塞の内部で2百万匹以上の仲間たちが24時間休み無く動き回っている。


女王アリは30年以上も生き続ける。
居住室の設計は彼女の身体を抱きしめる様な形に出来ており、何千という働きアリが絶え間なく彼女に食事を与え、彼女の身体を清潔にし、産卵が起こると、彼女が生み出した卵を居住室から運び出す役目をになう。
彼女は居住室の中で身体を痙攣させて次から次へと産卵を続ける。
1日に3万個、生涯で1億個以上の卵を生み出す。女王アリは生まれてから死ぬまでその場所を動く事がない。



『バグズ・ワールド』予告編

カースト


オオキノコシロアリは社会性昆虫で、4種類のカースト制がとられている。
「働きアリ」は体長は4ミリ位で淡灰色。回廊の土を掘り進み、分泌物を接着剤にしながら、互いに連結したトンネルを建設する。
働きアリは幼虫や卵たちの世話をし、吐き戻した栄養価の高い餌を口移しで王室カップルに与え続ける。


「兵隊アリ」は平均体長は8ミリ位。
任務は巣を守ること。
その大きな頭で全ての出入り口をふさいで敵の侵入を阻止する。
攻撃となれば彼らは自分たちの周りにある全ての生物を真っ二つに切り裂く冷酷無比の戦いぶりを見せる。


「羽アリ」(生殖蟻)は、オオキノコシロアリの中では唯一性的に成熟した個体で、2対の羽根を持っている。
雨期が始まると同時に外に飛び出し交尾を開始する。
彼らのグループの中から将来の王様と女王アリが生まれる。
雌雄のカップルが決まると、地中にもぐって、新たなコロニーの創設をはじめる。


王と女王


シロアリの「王と女王」は要塞の中心に位置する居室で暮らしている。
一生涯その場所から去ることなく、片方が死ぬまで添い遂げる。
王の体長は平均的働きアリの倍のサイズで、色の濃い茶色ですぐに見分けられる。
王は定期的に女王と交尾し、女王は1日に3万個の卵を産み出す。
女王の体長は10センチ近くあり、巨大なお腹を抱えて居室の半分以上の面積を占めている。
完璧な卵製造機で、身動きも出来なければ、攻撃に対してわが身を守る事も不可能。


オオキノコシロアリの主食は朽ち果てた材木で、夜になるとアリの巣から数百ヤードの範囲まで出てゆき食料を探しまわる。
その道中でも働きアリは、シロアリを専ら狩るハリアリの様な捕食生物から自分の身を守る為トンネルの壁を作りながら進んでゆく。
材木を確保すると口の中でそれを咀嚼して部屋の中にストックしてゆく。
そこで菌類(キノコなど)が栽培されて、成長した菌類を野菜のように食べるのだ。