『バグズ・ワールド』は、2005年7月5日から9月15日の期間、西アフリカのブルキナファソのバンフォーラ及びボボ・ディオウラッソ地区でHDビデオにて撮影された。現在、公開中。
サスライアリ
放浪型 戦闘的
食糧:肉類、無脊椎動物
集団攻撃 発達戦略 特殊な食習慣
サスライアリは放浪性で、毎晩の様に住居を変える事が出来るが、環境がよければ一定の場所で長く暮らす場合もある。
そこでまわりの食糧を食べつくすと、次により豊富な食糧調達場所を求めて移動してゆく。
サスライアリは動物性の餌のみを食糧とする。
サスライアリの群れは大体20センチ幅で1000メートルの長さの巨大な行列になって狩りをする。
その行列は全体で2千万匹の蟻からなり、総重量が20キロにもなる。
行列には何千何万という働き蟻が群れていて、アリたちが近づくと、彼らが枯葉や植生を踏みしだく独特の音がする事で感知する事が出来る。
人間を襲う
力強い鎌の様な形の角で、蟻たちは進行方向にある全ての物を狩りつくし食い尽くしてゆく。
彼らの獲物は昆虫だけでなく、巣にいる鳥や、小型哺乳類や、大きなヘビ、柵の中に暮らす家畜なども含まれる。
健康な大人であれば噛まれても害はないが、動けない赤ちゃんなどが噛まれると大怪我を負ったりする場合もある。
地元のアフリカ人部族はそれを良く知っていて、蟻の通り道には幼児を放置しない様注意を怠らない。
サスライアリのコロニーは3段階のカースト制度がとられている。
繁殖できるのはオスと女王だけ。
他の蟻は子供を製造する器官を備えていない。
女王蟻は巣の中で最も大きな個体で、時には50ミリの大きさを持つものがある。
女王蟻は一生で何百万個という卵を産み、2週間から6週間で孵化する。蟻の幼虫は白く、脚が無く、動く事ができない。
成長を続ける幼虫たちは働き蟻たちによって常に栄養が与えられ、清潔にされ、保護される。
雄蟻は交尾のためにだけ存在し、一旦交尾が終わると死に、食い尽くされる。
崇高ささえ感じさせるダイジェスト版
オートマトン戦争
このように対照的なオオキノコシロアリ(防衛型・草食性)とサスライアリ(攻撃型・肉食性)が戦争状態になったらどうなるのか。
登場する蟻たちは、すべてオートマトン(機械人形)たち。
社会性昆虫の世界では、個体や個性は殆ど意味を持たない。
アリのコロニーは「集合知性」の原理に従い、科学的に動くコンピューターのようなもので、二つのコロニーは遭遇した後、地獄の渦に巻き込まれていく。
彼らはただ自動的に反応し、集団で示される挙動を起こす。
オオキノコシロアリの無敵の要塞に、獰猛で強力なサスライアリの軍団が迫ってくる。
その数、二千万匹。
やがて始まる壮絶なる攻防戦。
オオキノコシロアリの巣の内部はトンネルや回廊や、育児室や、菌床など、巨大な化学工場の中枢部に匹敵する複雑に入り組んだ構造を持っている。
しかし一旦攻撃を受けると、最終目的である女王アリを保護する為に、巣の内部の繋がりが全て絶たれる。
外部の壁に少しでも穴があいた場合、働きアリは、ほんの数分内で女王アリが住む居室に繋がる全てのアクセス・ルートを塞いでゆく。
別世界の戦争
オオキノコシロアリは敵から攻撃を受けても、他の動物や植物の様に仕返しをしたり、攻撃をしかけたりする事は絶対にない。
常に防衛一方で、それは何世紀にも渡って完成された建築技術によってなされる。
しかし、サスライアリの容赦なき攻撃はシロアリ軍の兵隊アリの守備をい撃破し、帝国は大混乱に陥る。
果たしてシロアリの帝国はサスライアリの侵略を阻止することができるのか。
サスライアリの軍隊がシロアリの女王の部屋まで迫ったとき、意外な運命のいたずらが起こった。
雨が降り出したのだ。
シロアリの要塞に水が流れ込むと、途端にサスライアリが迷走をはじめる。
サスライアリは女王が指揮系統を統括し、臭いで互いを連結させて動くのだが、水によって臭いが消されると動きがにぶくなる。
シロアリの兵隊アリが反撃を開始。
サスライアリの軍隊は撤退をはじめ、シロアリの巣のなかに取り残されたサスライアリは、次々とやられていく。
シロアリの女王の部屋からサスライアリが一掃され、要塞のなかに再び平和が戻っていく。