- 作者: 梶井基次郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/08/01
- メディア: 文庫
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「闇の絵巻」
梶井基次郎に伊豆の湯ヶ島を舞台にした「闇の絵巻」という短編小説がある。
主人公の「私」は「下流にあった一軒の旅館から、上流の旅館まで帰って来る」間に、山深い闇の道を歩いてくる。
今でこそ温泉街として知られているが、昔の湯ヶ島には旅館が4、5軒くらいしかなかった。
梶井基次郎は、落合楼に逗留していた川端康成を訪ねていたという。
他にも梶井の遺稿「温泉」という短文を読むと、真夜中に温泉浴場へ通っていたことがわかる。
宇野千代が書いた「梶井基次郎の笑ひ声」(ちくま文庫『梶井基次郎全集』所収)では、これらとは違った見解が述べられている。
それよれば、湯ヶ島時代、梶井は27歳、宇野は29歳の若さだった。
梶井は宇野のいる湯本館へ、夜の食後の散歩と称して、毎晩のように通っていたという。
梶井はまわりの人に決して自分の感情を見せることがなく、病気のことも隠していた。