シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

『悪徳』 ロバート・アルドリッチ 

johnfante2009-07-07


『悪徳』(1955) ロバート・アルドリッチ監督(劇場未公開)
原題 「The Big Knife」 

ストーリー


傑作『キッスで殺せ!』と同年に製作された準室内劇。
チャーリー・キャッスル(ジャック・パランス)は、ハリウッドのAランクの俳優。創造的な作品に参加してこなかった後悔と、どうしようもない新作シナリオの前で逡巡している。
なおざりにしてきた妻の助言を受けて、スタジオ会社との7年間の契約を断ろうと決意する。


ところが、権力を巨大化させるスタジオ会社の社長ホフ(ロッド・スタイガー)に圧力をかけてくる。ホフとその助手は、何がなんでも再契約をさせようと汚い手を使う。
チャーリーがひき逃げ事故を隠していることを知り、それを利用しようとするのだ。チャーリーは俳優としての栄光と、キャリアの崩壊の狭間で揺れ続ける。



『悪徳』のオリジナル予告編

コメント


ハリウッドのスタジオ・システムに巣食う闇を、室内劇で見せきる重厚なドラマ。
元は『喝采』の原作戯曲、『成功の甘き香り』『嵐の季節』の脚本で知られるクリフォード・オデッツの戯曲の映画化。
ロバート・アルドリッチは知的なメロドラマに仕上げているが、観客が主人公に感情移入できないため、興行成績は振るわなかった。
16日間で撮影されたユナイテッド・アーティスツ社出資の低予算映画である。



それにもかかわらず、批評家の中では根づよい人気がある映画でもあるようだ。
「毒入りのペンで書いた映画産業への手紙」という評言に代表されるように、ハリウッドのスターシステムやスタジオシステムを自己暴露的に描いたところが新鮮であったようである。
個人的には、室内劇を飽きさせないように見せきるアルドリッチの工夫と、50年代のハリウッドにおける退廃的なムードに少なからぬ感銘を受けた。


クレジット


監督:ロバート・アルドリッチ
製作:ロバート・アルドリッチ
原作:クリフォード・オデッツ
脚本:ジェームズ・ポー
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:フランク・デ・ヴォール


出演
ジャック・パランス
アイダ・ルピノ
シェリー・ウィンタース
ロッド・スタイガー