ハル・ハートリー
インディーズ映画という言葉が、ある時期、盛んに使われていました。
ニューヨークを拠点に活動する、その代表格といわれているのがハル・ハートリーです。
彼の作品は2000年以降、日本ではほとんど紹介されなくなっているようですが、コンスタントに新作を撮り続けている作家です。
そのハル・ハートリーの1997年の映画に『ヘンリー・フール』という映画があります。
知恵遅れだと思われていたゴミ清掃夫の青年サイモンが、ヘンリーという浮浪者の勧めでノートに詩を書きはじめてノーベル賞を受ける、という現代のおとぎ話のようなストーリーでした。
このサイモンという青年の姉のフェイを主人公にしたのが、2006年の『フェイ・グリム』という続編です。
『フェイ・グリム』予告編
『フェイ・グリム』
前作から7年後の設定。
サイモンは著名なノーベル賞文学者に、セックス狂だった姉のフェイはシングルマザーなっています。
駄作だとわかったヘンリーの「告白」という原稿には、実はアメリカの安全を脅かすことが書かれていました。
どうやらヘンリー・フールという浮浪者はテロリストだったらしいのです。
そして、CIAが動き出し、フェイは夫のヘンリーを探してパリからイスラム世界へ向かいます。
『フェイ・グリム』はおどき話というか、何か大作映画のような筋書きですが、独特のオフビートなゆったりとした空気は健在です。
ハル・ハートリーは、この映画をすべてダッチアングルで撮っています。
ダッチアングルというのは、わざと水平ではなく、カメラを傾けて撮ることで、通常では人物の不安などを表現します。
インディーズ・スピリットというものを感じさせてくれる映画です。
サンダンス映画祭でのインタビューによると、全篇で2カットだけ、普通に撮ってしまったところがあるそうです。
そんなショットを探しながら『フェイ・グリム』を見るのも楽しいかもしれません。