シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

パラサイトの脅威 ②

johnfante2009-09-08

ラニアより怖い魚


アマゾン川でピラニアより恐れられている魚がいる。カンディルという小さな魚だ。
観光客はガイドからその魚の警告を受ける。
「決して川の中で小便をしないで下さい。カンディルが体の中に入ってきてしまいますからね」と。
地元の漁師によると、カンディル尿道から侵入するのだという。


ブラジルのマナウスにある国立アマゾン研究所では、このカンディルの恐ろしい生態を研究している。
大型の魚の血をエサとするカンディルは、魚がエラから出す尿素に反応する。
エラの中に侵入したカンディルはトゲで体を固定し、肉を食いちぎって血を吸う。
そしてカンディルは魚だけでなく、人間の尿にも反応する事があるのだという。




シルビオ・パーポーザはこのカンディルの被害者の1人だ。彼が川の中で放尿したのをカンディルがかぎつけ、ペニスの中に侵入してきたのだ。
シルビオは尻尾をつかんで引き抜こうとしましたが無駄だった。エラブタにあるトゲでしっかりと固定されて抜けなくなっていたのだ。
カンディルが侵入すると中から食われる、そう聞いたシルビオは恐ろしくて震え上がったという。


4日後、シルビオはようやくサマド医師に会い、彼に命を救われた。
サマド医師のところに来たシルビオは、発熱し出血がひどく、顔を苦痛でゆがめて助けを求めてきたのだという。
医師は内視鏡メスをシルビオ尿道に挿入し、除去を試みたが、3〜4回にわたって引っ張ってもカンディルは出て来なかった。
苦労の末、トゲを切除し、カンディルを取り出すことに成功。
出てきたカンディルは体長13センチもあったそうだ。


※ カンディル(candiru)の何種類かは人や他の動物も襲うため人食いナマズとしてピラニアよりも恐れられている。
アマゾン流域に生息する小型のナマズで、大型魚のエラから侵入して血を吸う種類もいるらしい。
中には人間を襲うものもいて、尿道や肛門から侵入して体内を食い破る。
また、捕獲してバケツなどに入れておくと、その口を使ってバケツ壁面を登ってくるというような不気味さもある。


眼球を乗っ取られた男


ミュージシャンの「モーマス」ことニック・カリーは1998年ツアー中のギリシャ寄生虫に人生を変えられてしまった。
ツアーから戻ると右目が充血していて、最初は結膜炎かと思ったというニック。
だが数日後には霧がかかったようにはっきり物が見えなくなってしまう。
マズイと思ったニックは、ロンドンの眼科で検査を受け、その結果、微小な寄生虫の侵入が判明した。
水道水やプール、飲料水にさえも生息するアカントアメーバが、コンタクトレンズを経由して目に触れ、さらにニックの角膜のわずかな傷から入り込んだのだ。



ニックはコンタクトの扱いには細心の注意を払っていた。水道水ではレンズを洗わないよう眼科医に指導を受けていたが、保存容器は洗っても大丈夫だと思っていたという。
アメーバは温かく湿った快適な環境で増殖し、眼球の表面を占拠していった。ニックの治療は難航し、彼の視力はますます低下していった。
そしてとうとうニックに残酷な宣告が告げられた。ダメージが大きすぎて、右目の回復は絶望的だというのだ。
今では光を照射されてもぼんやりとしか見えない。強い光なら感じられるものの、物体は自分の手さえも見えなくなった。


「コンタクトにリスクが伴うことは知っていたが、まさか寄生虫に角膜を食われるとは思わなかった。ちっぽけな生き物がこんな恐ろしい力を持っているなんて・・・ぞっとします」
そう語るニックの右目を覆う眼帯が痛々しい。


※ アカントアメーバは普段は土壌や水溜まりに棲息しているが、コンタクトレンズの保存液中で繁殖して激しい角膜炎をおこし、失明に至ることがある。
アカントアメーバやBalamuthia mandrillarisはアメーバ性肉芽腫性脳炎を引き起こすことがある。
また様々な自由生活性アメーバがレジオネラ症の病原体(レジオネラ菌)の繁殖宿主として働いていることがわかっている。