シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

『別冊文藝 開高健』

johnfante2010-02-18


発売中の『別冊文藝 開高健』(河出書房新社)の「開高健ブックガイト」にて小説ガイドを書きました。
長篇・短編合わせて20本の小説に解説をつけました。
開高健の作品は割合読んでいる方でしたが、今回、代表的な作品はほとんど読んだのではないでしょうか。



掘り出し物は、開高健の唯一の新聞小説であり、長篇推理小説である『片隅の迷路』(創元推理文庫)。
「徳島ラジオ商殺人事件」を忠実に描いた小説ですが、検察権力の横暴とそれと戦う市井の人々の苦しみが描かれています。
この小説は、山本薩夫監督によって『証人の椅子』という骨太の社会派映画へ移植されています。


また全集でしか読めませんが、「屋根浦の告白」「街と部屋で……」「パンテオンを……」の未完に終わった、アドルフ・ヒトラーの青年時代を描いた短編連作も見逃せません。
後年もアウシュヴィッツを訪問したり、アイヒマン裁判を傍聴した開高健のナチズムに対する関心は、まだまだ解明の余地があると感じました。


よろしければ、お近くの書店で手にお取りください。