シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

300人を殺したギュスターヴ ②

johnfante2010-02-12





生き残り


村には連続殺人鬼の攻撃を受けて、生き残った1人の理髪師がいる。ハツンギマナ・アウディファクス(Hatungimana Audifax)さんだ。
彼の名前Hatungimanaは、キルンジ語で「神が安全に守りたまう」という意味である。アウディファクスはブジュンブラ湖の沿道で働いている。


「もう7年も前のことだよ。俺が13歳だったから。午前11時半頃、友だちと一緒に泳ぎに行ったんだ。ヴードゥー・ビーチと呼ばれる浜辺だった。近くにいた人が、危ない逃げろと叫んだらしい。でも、俺には聞こえなかった。俺はそいつに足をつかまれた。最初、友だちがふざけてやっているんだと思ったよ。振り返ったら、怖ろしくでかい、年老いたそいつがいたんだ。すごく痛かった。本当に信じがたかったよ」



近くにいた漁師がオールで水面を叩き続けたので、殺人者はつかんでいたアウディファクスの足をゆるめた。彼はそいつに付きまとわれながらも、命からがら岸辺まで泳いでいった。
エスコートされているみたいだった。たぶん、漁師さんのおかげで攻撃はしてこなかったんだと思う。振り向くと、そいつと目が合ったんだ。俺の足はつぶれて、肉はぼろぼろに引き裂かれていた。痛みのあまり、気が狂いそうだったよ」


 医者は望みがないと言い、彼の膝から下の足を切断した。なぜアウディファクスは、それが伝説の殺人鬼「ギュスターヴ」の仕業だったと言い切れるのか?
「理由を教えてやるよ。病院に入院しているとき、他にも4人の人間が襲われ、浜辺で殺されたと聞いたんだ。たった1つの浜辺で5人の人間がやられた。これがギュスターヴのやり方ってもんさ。もちろん、これからも泳ぐことはあると思うよ。楽しいからね。でも、あまり遠くへは絶対に行かないね」

殺人鬼ギュスターヴ


ギュスターヴはアフリカでも、最大級のワニだと言われている。世界で最大の淡水ワニであるという者もいる。
この爬虫類は体長がおよそ6メートル以上、体重が1トンに近いと考えられる。記録されたイリエワニのなかでも最大級のものに匹敵する。
ギュスターヴは、タンガニーカ湖の近くの川島に住んでいるようだ。20年間ブルンジ共和国に住み、動物に強い興味を寄せるフランス人のパトリス・ファエによって、その名前を与えられた。
彼はエイハブ船長のごとく、このワニに固執し、6年以上ギュスターヴを研究している世界一詳しい人物である。ファエ氏は怖れをこめて話す。



「そいつは巨大です。ブルンジの他のワニの3倍ほど大きいです。あまり俊敏ではなく、他のワニが食べるものを餌にすることができません。魚と小さな哺乳類など、捕らえるのが簡単な餌食を攻撃します」


 ワニはカツンバ村の水遊びをする人たちと、漁師にとって恐怖の的である。
「ギュスターヴがルジジ河の水から出てくるとき、非常に危険な存在となります。彼は河にそって一帯を旅していて、漁師と水遊びする人を食べるんです。一度の旅行で10人から20人もの人間を食べることができます。ある年、彼が動いたであろう経路を私も辿ったんです。17人もの人間が、カニョシャとミナゴの間にある河で襲われ、捕食されました。しかし、ギュスターヴは一年の大部分を島の近くで過ごしています」




全米興行収入1位になった映画ですが、DVDスルーで「カニング・キラー 殺戮の沼」という邦題で発売されています。