シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

四川のうた

johnfante2010-10-05

DVDで、ジャ・ジャンクーの『四川のうた』を観る。


ドキュメンタリー部分とドラマ部分が見事に接合し、その境界が見えないような映像世界。
基本的には、壊される工場の関係者を巡るインタビュー映画だといえるのだが、合間合間に登場人物たちを動かしてドラマ部を撮っている。


それは、歩いてくる人物を正面から撮影していたり、飛行機が展示されている公園の前を歩かせたり、故意に「演出」だと分からせるように撮っていることからも明白だ。
ドキュメンタリー映画に虚実を織り交ぜる手法は昔からあるが、入れ込んだフィクション部分を虚構だと強調してみせるのは、ポスト・ドキュメンタリーとでも呼ぶしかない最近の映画の特徴である。



新聞やニュースでは大国主義的な振る舞いをする「中国政府」が話題になっている。
だが、私たちは中国の人々の「個人の歴史」をあまりにも知らない。そのような観点からも、非常に興味深い一本である。