シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

デイヴィッド・リンチの短編映画 ②

johnfante2007-04-19


右写真の「The Short Films of David Lynch」は、初期の学生時代に撮っていた短編映画などをまとめてDVD化したもの。
デイヴィッド・リンチ本人のインタビュー映像をまじえながら、6本の短編映画が紹介されている。


「The Alphabet」 (1968)  4 mins
少女が夜にみる悪夢についての映画。
少女は自分の成長について、勉強についてアルファベットを復唱することについての悪夢をみる。
実写と無邪気な絵画のアニメーションを組み合わせて、少女の心につきまとう不安要素を実体化している。


↓ 下の映像は「The Alphabet」の一部。当時の妻ペギーが出演している。



「Six Men Getting Sick」 (1966)  4 mins
デイヴィッド・リンチの記念すべき処女作品。
この映画は1分間のアニメーションが、4回にわたってループされる実験的なフィルム。
当初、このフィルムは美術作品の一部として製作された。
タイトルからもそのプロットが類推できるが、漫画風に描かれた6人の頭部が気分悪くなり、嘔吐するという内容。
リンチの画家・実験映画作家時代への良きイントロダクションとなっている。


「The Grandmother」 (1970) 34 mins
まだ未熟で野蛮ですらある若い夫婦は、息子を叱りつけて虐待している。
慰めをもとめている息子は、二階のベッドルームに1袋の変な種を見つける。
そして、それを彼はベッドに植える。
水を与えていると、そのうちに種は表面が粘着質の薄気味悪い植物に成長し、ある日、そのなかから「祖母」を生みだす。
そのやさしい老婦人は、少年のことを親切に面倒をみる。
しかし、両親は息子が仕出かしたことを発見して、さらにトラブルは深まっていく。
リンチが実写とアニメーションを混在させるという手法をとった最後の作品となった。


「The Amputee:」2 Versions (1974) 5 mins/4 mins
ある若い女性が椅子にすわって、恋人に手紙を書いている。
その内容は友情、信頼、そして裏切りなどである。
女性の両脚は腿の中途で切断されており、それを男性の看護士が処置している。
しかし、思わぬハプニングが起きて…。
アメリカン・フィルム研究所(AFI)のために、実験用に撮られた短編ビデオ。



↑上の映像は、リンチがPS2用に製作した有名なコマーシャルの「ウルフマン」。
なかなかシュールなアニメーションに仕上がっている。


「The Cowboy and the Frenchman」 (1989) 26 mins
カウボーイのスリムとピートとダスティは、観光牧場で退屈な午後を過ごしている。
そのとき、道に迷った男が山を下ってくる。
男はヨーロッピアンなスーツを着ており、ベレー帽をかぶっている。
カウボーイたちは、男の旅行鞄の中身をみて、フランス人であるということを発見する。
難聴のカウボーイとフランス語しか解さないフランス人、それに訛りのつよいインディアンが混ざって、何とも壊れた会話が取り交わされる。
しかし、なぜか意気投合して、牧場で一晩中パーティがおこなわれる。
この作品は、当初フランスのテレビ番組用として製作された。


「Lumière:Premonitions Following an Evil Deed」(1996)52 sec
若い女性の死体が警察によって発見される。
年老いた女性が苦悶の表情を浮かべて立ち上がる。
煙がスクリーンいっぱいに広がり、水が入った大きなシリンダーが並んでいるのが見えてくる。
そのなかに閉じ込められた裸の女性。
炎が燃えあがり、場所は老夫婦のリビングルームになる。
年老いた女性が、玄関ドアに出るために立ち上がる。
警察が到着したのである。彼らの帽子は手ににぎられている。
映画100年を記念して、当時、リュミエール兄弟が使ったカメラと技術を駆使して撮られた短編フィルム。