モーリス・ブランショ ②
- 作者: モーリスブランショ,Maurice Blanchot,重信常喜,橋口守人
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1997/06/01
- メディア: 単行本
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カフカ、マラルメ、ロートレアモン、ヘルダーリンといった文学者たちを召喚し、自己を批評家として生成していった時期の評論集『焔の文学』。
次作『文学空間』で結実するブランショ思想のあらゆるエレメントが豊かな萌芽をみせつつ、多彩な顔ぶれの作家論や文学論がめくるめくうちに展開される過渡期の重要作。
批評家としての顔
誰が決めるのかわからないが、作家がひとりいれば、必ずその人の代表作とされる書物がある。
読んでみると、たいてい、代表作よりもその一、二冊前に発表された作品の方が読みやすくておもしろい。
ブランショの代表作は『文学空間』だといわれているが、かなりの難物としても知られている。
それに比べて、その一冊前の評論集である『焔の文学』は具体的に作家や作品が論じられていて好著だといえる。
カフカの日記からの記述と「変身」や「猟師グラッカスス」といった小説を読みながら「終末をもたらさない死」の恐ろしさが、どのようにしてカフカを「書くこと」の方へ追いやっていったかをあかす「カフカ読本」。
マラルメの詩における言葉が、できごとや事物を指し示すという言語本来の機能から乖離して「語で沈黙をつくることができる」ことを示し、ブランショ自身の文学的出発点をもあきらかにした「マラルメの神話」など。
のちにブランショの思想で中心的な役割を果たす「沈黙」「不在」「死」といったタームがいたるところで萌芽し、自在な描線をひいていく。
ブランショは、もともとは『アミナダブ』や『至高者』といった小説でデビューした作家だが、世間に知られるようになったのは後続の文芸批評の著書によってだった。
本書はブランショが自分を批評家としてつくりあげていった時期の過渡的な作品であり、読み物としても優れたものになっている。