シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

モーリス・ブランショ ③

johnfante2007-07-24

モーリス・ブランショ

モーリス・ブランショ


(写真左が若きレヴィナス、右がブランショ

レヴィナスによるブランショ


私生活においても交友の深かった思想家のレヴィナスが、ブランショを縦横無尽に論じた『モーリス・ブランショ』。
ハイデガー哲学の批判にひきよせつつ、ブランショ思想の核心を開示してみせる「詩人のまなざし」ほか、小説論やインタビューなど4編を収録。絶好の入門書で、研究的価値も高い好著。
「芸術は、ブランショによれば、世界を明るくするどころか、いかなる光も差し込まないような荒涼たる地下室をあばいてみせるのである」


公的な場にでることを避けたブランショだが、一方で、バタイユレヴィナスとの交友が知られている。
レヴィナス20年代の大学時代にはじまり、およそ70年にわたって親密につきあった。
ドイツ占領下のフランスでブランショが奔走し、ユダヤ人であるレヴィナス夫人を収容所行きから救ったという逸話もある。
本書には、盟友レヴィナスブランショについて論じた4つのテクストがまとめられている。
ハイデガー存在論の批判にひきよせつつ、ブランショ思想の核心にせまる「詩人のまなざし」。
小説作品を論じた「奴婢とその主人」。
ブランショ研究の可能性についてインタビューで語る「アンドレ・ダルマスとの対話」。
短いテクストの読解を試みる「『白日の狂気』についての演習」。


ほかにもブランショを論じた代表的なテクストに、フーコーの「外の思考」(『ミシェル・フーコー思考集成2』に収録)や、デリダの『滞留 ポイエーシス叢書45』などがあるが、本書には別格のおもむきがある。
それはレヴィナスがここで、ブランショの思想のうなりに耳をすまし、内側から共鳴・反響しようと強く意図しているからだ。
人生においても思想においても共闘関係にあったレヴィナスだからこそ書くことのできた、ブランショ思想の絶好の入門書であり、研究書であり、心をうち震わせるような好著である。


ブランショの小説


望みのときに (転換期を読む)

望みのときに (転換期を読む)


「さあ起きる、何かが起きる、終末が始まる」
〈わたし〉はあるアパートメント訪ねてふたりの女友達と邂逅するが──。
人称性や物語性が希薄になっていったブランショ作品のなかで、固有名が登場する最後の小説。
盟友バタイユが「幸福な書物」と評した1951年発表のフィクション。



初出:Amazon.co.jp