シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

アメリカ超能力部隊 ③

johnfante2008-10-17

実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)


右写真はヤギをみつめる著者

山羊の心臓部へ


ジョン・アリグザンダー大佐は、ジム・チャノンの演説を聞いた1人だった。
現在、大佐は国防総省とロスアラモス研究所の特別顧問を務めている。彼はジム・チャノンの後継者とも言うべき人物で、70年代後半から非殺傷性兵器の開発を進めてきた。
ジョン・ロンソンは、ラスヴェガスにある大佐の自宅へ会見に行く。大佐はユリ・ゲラーと友人だというので、ロンソンは思い切って訊ねる。
ユリ・ゲラーを現役に復帰させた男をご存知ですか」
大佐は黙ってしまった。
「では、エイチャニスは本当に見つめるだけで山羊を殺したんですか」
「君が言っている山羊を殺した男は、間違いなくガイ・サーヴェリのことだよ」


 オハイオ州クリーヴランド郊外に「サーヴェリ・ダンス&武術スタジオ」は建っている。ロンソンはそこへガイ・サーヴェリに会いに出かけた。
「あなたは確かに山羊実験室にいらしたんですか?」
「そうだ。わたしは確かにあそこにいたときに山羊を殺した。今もそのテクニックは実践できる。先週、飼っていたハムスターを殺したよ」
「見つめただけで?」
「テープに撮ってあるんだ。録画した。それを見るといい」
 ビデオに映ったのは2匹のハムスター。1匹はガイに見つめられて、籠の車輪に脅えるようになっていた。そして、最後には倒れてしまった。
それから、ガイは山羊実験室の室内図と写真を取り出した。写真は柵のそばで、空手チョップで山羊を殺す兵士の姿をとらえていた。


ガイ・サーヴェリという男


ガイは民間の武術家だったが、78年にエイチャニスが死んだ後、フォート・ブラッグ基地の武術の講師として招じ入れられた。後釜になるかどうか1週間様子を見る予定だった。
彼は特殊部隊に、素手でコンクリートを割る方法や首筋を鉄棒で強打されて耐える方法、それに人にこれから言おうとしていることを忘れさせる方法を教えた。
それは頭のなかで「やめろ」と言うシンプルな方法だ。ビリヤードをしていて、相手にミスショットをさせるときと同じだとガイは言う。



著者ジョン・ロンスンへのインタビューなど


初日の晩、特殊部隊は自分たちが山羊を飼っているとガイに漏らした。そして、会話の流れからそれをやってみることになった。
ガイが見つめた山羊は鳴き声も奪われず、脚も撃たれていない普通の山羊だった。ガイはビデオカメラを持った兵士のいる小さな部屋へ入った。壁で仕切られた向こうに実験動物である山羊がいた。
頭のなかでガイは空へと続く黄金の道を描き、聖ミカエルが剣で山羊を突き刺すところを思い浮かべた。ガイは意識を失いかけた。
15分後、ガイは特殊部隊のレニーに「見に行った方がいいぞ」と声をかけた。レニーは山羊がいる部屋へ行き、山羊が倒れているのを目撃した。しかし、死んではいなかった。


3日目に新しい実験が準備された。ガイは特殊部隊員たちに山羊を30匹集めるように指示し、それに番号を振った。
山羊実験室の周囲に武装した衛兵を配置。厳粛なムードだった。ガイは無作為に16番を選ぶと取りかかった。今回はまったく集中できなかった。
ガイの瞑想は「山羊を殺せ」と叫ぶ特殊部隊員のイメージによって中断された。それでも、レニーが隣の部屋をのぞきに行くと17番の山羊が死んでいた。


イラク戦争


それから10年後、3人の特殊部隊員がフォート・ブラッグからクリーヴランドへ訪ねてきた。彼らは噂が本当かどうか目で確かめたがった。
ガイは山羊を殺したくないので、兵士たちにその方法を教えた。地元の獣医の診療所で会い、そこには山羊と心電図が用意されていた。ガイはロンソンの目の前で、そのときのビデオテープを入れて再生した。



山羊のにらみ殺し映画のオープニング。
山羊が心電図に繋がれている。場所は診療所。戦闘服の兵士が2人メモを取っている。山羊がめえと鳴く。カメラのすぐ横にいる男が山羊をにらんでいる。
山羊の心拍数が60台から55まで落ちていく。ビデオはそこで終わった。
ガイによれば、これがレベル1である。レベル2に進めば、山羊は倒れるか、死ぬかとのことだった。「また来たら続きを見せてあげよう」とガイに言われて、ロンソンはなくなく帰っていった。


2004年7月。
ロンソンの元にガイ・サーヴェリから電話があった。ガイはフォート・ブラッグ基地の新任司令官に、自分の能力を見せるためにハムスターを連れて行く予定を話した。
数日後の電話。ガイはジム・チャノンの地球大隊の戦士僧、つまり武器を持たない兵士を軍がイラクへ送り込みたがっており、ガイ自身はその顧問として機密扱いでイラクへ行くことになったという。
その電話以降、ロンソンはガイと連絡が取れなくなった。