シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

映画の考古学

johnfante2009-07-24




少し前にツェーラムの『映画の考古学』新装版に関する書評を書きました。
下記は、その冒頭部分の抜粋です。

映画の考古学


初版から三十年が過ぎ、『映画の考古学』が版を重ねている。
ドイツの考古学者C・W・ツェーラムが、影絵からはじまり連続写真へといたる映画技術の成立史を書いた名著である。
本書は一八九五年に映画が誕生する前の「前史」について、七割強の分量を割いている。


映画はさまざまな異才が切り拓いた発明品なのだが、この本の豊富な写真図版をめくっていると、映画が人間の欲求とテクノロジーの交差する場に生まれた歴史的必然だったことが見えてくる。
その技術発展の裏には、知覚をより拡充したいと願う人類的な要請があったようなのだ。
ここでは「視覚系」「光学系」「化学系」の三つの欲求が合流し、映画への流れを形成する「欲求の歴史」の観点から辿り直すことで書評の責を果たしたい。



ドイツの実験映画作家・映画研究者ヴェルナー・ネケス(Werner Nekes)による映画前史をめぐるドキュメント『フィルム・ビフォー・フィルム』の冒頭部分


ソーマトロープ


まず「視覚系」の欲求は残像の発見にはじまる。
眼の網膜に映ったものは、それがなくなった後も数分の一秒の間残って見える。
この発見は、動く絵を見たいという眼の欲求を引き出した。
そして一八二五年、最初の映画的な玩具であるソーマトロープが生み出される。


円い紙の両面に絵を描き、両側から糸で引っぱって回転させると、二つの絵が重なって一つの絵になる。
いわばアニメーションの祖先である。
元々アニメーション(動画)はラテン語のアニマ(霊魂)が語源で、生命のないものに動きを与えることをいうらしい。



つづきは下記の雑誌にてお読みください。

映画芸術 2009年 05月号 [雑誌]