シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

「悪魔の沼」 ジョー・ボール ②

johnfante2007-08-09

悪魔の沼 [DVD]

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捜査の手がのびる


1938年1月、ドロレスは自動車事故に巻き込まれて、そのせいで後に左腕を切断されることになった。酒場のアリゲーターに噛まれたのではないかとも噂された。
4月にドロレスは失踪してしまい、続いてヘイゼルもどこかへ消えてしまった。


3人の女たちがいなくなっても、ジョーにはアリゲーターがいた。ジョーは彼らを可愛がった。
あるとき、アリゲーターにやる腐った肉の餌が臭いと、近所の人間が苦情を言いに行くと、ジョーは銃を取り出し、紳士的とはいえない態度で「餌なんだから仕方ないだろ。他人のことに首を突っ込むな」と言った。その近所の住人は、他の町へ引っ越した。


酒場を手伝うものはいなくなったが、店は繁昌していた。
38年の半ばになって、ミニーの家族がジョーにしつこく質問をするようになった。家族はミニーを見つけることができず、ベクサー郡の保安官のジョン・グレイ(John Gray)に相談した。
ジョーはミニーの最後の恋人であり、雇用主でもあったので、何度か保安官の質問を受けたが、失踪事件の容疑者とされるまでには至らなかった。



性と暴力の描写に満ちた70年代のアメリカを象徴する映画


2、3ヵ月後、もう一家族が警察へ相談に行った。23歳のジュリア・ターナーが失踪したというのだ。
ジュリアはジョーの店でアルバイトをしていた。
今一度、保安官のジョン・グレイがジョーを訪ねたが、ジョーは「ジュリアは何か個人的な問題を抱えていて、先へ進まなくてはならない、とか言ってましたよ」と言った。


しかし、警察がジュリアのルームメイトに話を聞くと、部屋にはジュリアの洋服や身のまわりの物がそのまま残っていた。グレイ保安官が再度ジョーに話を聞くと「そのルームメイトとの間に問題があって、家に帰りたくないというから、500ドル貸してあげたんですよ」と話した。グレイ保安官は厳しく尋問したが、何らの確証を得ることもできなかった。


ジョーの最後


38年9月23日。ついにジョーの運も尽きた。
昔から住んでいる近所の人が、グレイ保安官に「ジョーが人間の死体を切り刻んで、アリゲーターの餌にしているところを目撃した」と証言した。
さらに、メキシコ系アメリカ人の男が「ジョーの妹の家の裏に、すごく嫌なにおいのするドラム缶を置いてある」と苦情を言ってきた。


しかし、翌朝にグレイ保安官と相棒のジョン・クレブンハーゲン(John Klevenhagen)が駆けつけたときは、ドラム缶はなくなっていた。とはいえ、ジョーの妹もその事実を認めたので、捜査員の2人はジョーの元を訪れた。


グレイ保安官と相棒が「ソーシャブル・イン」に着いて、「詳しい話を聞くためにサン・アントニオ署まで同行してもらいたい」とジョーに言った。
ジョーは「先に店を閉めさせてほしい」と聞き、保安官たちは許可した。
グレイ保安官たちが酒場に座ったので、ジョーは2人にビールをふるまった。
それからレジまで歩いていき、ボタンを押してそれを開け、なかから45口径のリボルバーを取り出した。「やめろ!」とグレイ保安官たちは叫んだ。
ジョーは銃を心臓に突きつけて、トリガーを引き、酒場の床の上に倒れたのだった。


郡警察は「ソーシャブル・イン」の建物を隈なく調べた。
しかし、行方不明者の手がかりは見つからなかった。唯一見つかったのは、アリゲーターの餌で腐りかけた肉が池にあったのと、それを切り分けた斧とノコギリがあった。
他にも2人のウェイトレスと、酒場でうろついていた10代の少年の行方が分からなかった。ベクサー郡の保安官であるジョン・グレイは答えを求めて捜査を続けた。