シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

石井輝男の映画 ①

johnfante2008-09-22


石井監督の3周忌


2005年8月、映画監督の石井輝男が亡くなった。
81歳だった。
高倉健主演で撮った『網走番外地』は、2年連続で同シリーズ三本がベストテンを賑わすヒットとなった。
各新聞の追悼記事では、東映時代に築いたアクション監督としての地歩や、晩年、つげ義春漫画の映画化に情熱を傾けたことなどが報じられ、職人監督としての面が強調された。


だが、今回は石井輝男を「キング・オブ・カルト」の座に押し上げたエロ・グロ作品に絞って振り返りたい。
60年代後半の「異常性愛路線」や江戸川乱歩の映画化がなければ、せいぜいタランティーノや香港映画に影響を与えたヒットメイカーで終っていたであろう。



江戸川乱歩 恐怖奇形人間』の冒頭とラストシーン


異常性愛路線


各方面からバッシングを受けた「異常性愛路線」のなかで石井輝男の本当の才能は開花した。
60年代の東映はテレビの台頭に対抗するため、任侠映画を看板にして、映画館でしか見られないどきつい作風を売りにした。
その添え物として成人映画を導入することが社内で決まり、現場の助監督たちが共同で「低俗映画反対」の声明を出すなかで、職人気質の石井輝男は淡々とキワモノ映画を撮り続けていく。



『女体渦巻島』のダンスシーン


『徳川女系図』ではエロスとナンセンス、『徳川女刑罰史』では拷問とサディズム、『猟奇女犯罪史』では強姦と猟奇殺人にまで主題をエスカレートさせていった。
「異常性愛路線」は興行的に成功して、70年代のロマンポルノや80年代のアダルトビデオへと続く大きな潮流を作った。


石井輝男の作品


新東宝名画傑作選 DVD-BOX8 石井輝男監督作品
『スーパー・ジャイアンツ・シリーズ』(’57年)
出演/宇津井健他  DVD/ジェネオン
ピアノ線吊りにされた宇津井健が水爆実験、奇病、謎の舞踊団と戦う特撮もの。TVの「スーパーマン」にヒントを受けた新東宝の子供映画だが既に怪奇性が強く出ている。



網走番外地 望郷篇 [DVD]
網走番外地シリーズ』(’65〜’67年)
出演/高倉健嵐寛寿郎由利徹他 DVD/東映
「公開映画は一週間の命」を合言葉に撮りまくり、売れっ子として映画会社の顔となっていた時期のメガヒット作。高倉健の歌った作者不詳の主題歌は放送禁止にもなった。



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『徳川女系図』(68年) 
出演/吉田輝雄賀川雪絵他 DVD/東映
東映が打ちだした「異常性愛路線」の代表作。人間不信に陥った将軍綱吉が大奥というハーレムを舞台に好色の限りをつくす。大奥女中の狂乱の裸踊りとふんどし相撲は圧巻。



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『徳川女刑罰史』(’68年) 
出演/吉田輝雄渡辺文雄小池朝雄他 
評論家の佐藤忠男に「低級さがやりきれない」と言わしめたゲテモノ映画。近親相姦をした女への拷問、尼寺での私刑、刺青師のサディズムをエロ・グロ趣味で描いた逸品!


初出 :「週刊SPA!」