シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

人間計算機 ③

johnfante2009-02-02

なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異

なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異


博士とのテスト


「ルディガー、もし私が1965年11月23日生まれだったら、それは何曜日?」
「それは火曜日でしょう」
ガムは即座に答えた。サヴァンは瞬時に曜日を言えるが、問題は、彼らは自分がどうしてそれができるのか知らないことだ。
スナイダー博士は、ガムが曜日を求める計算のメカニズムを理解しているのかどうか、知りたくなった。
それで質問を変えた。



ガムによるテストの様子(動画)


「1930年と2030年の間で、11月23日が木曜日になるのは何年と何年と何年?」
「私はこれまでそのような計算をしたことがないが、たぶんできると思います」
これには、サヴァンのような丸暗記ではなく、新しい解決方法を自分で作らなくてはならないのだった。
「1933年、1939年、1950年、1961年、1967年…」
ガムは見事に言い当てていった。
このことでスナイダー博士は、彼がサヴァンではないと確信した。
ガムはある特定のアルゴリズムに縛られているサヴァンではなく、自分でルールを変えて問題を解決する能力を持っているからだ。
「彼はサヴァンよりミステリアスで、興味深い対象ですね」と博士はいう。


ガムの挑戦


ガムは自分の現在の能力に満足せず、まだ先に進もうとしていた。
彼は今まで誰もやったことがないことに挑戦しようというのだ。
ラジオのDJにライブで数字を言わせ、それをオンエア中に即座に答えてみせようというのだ。
その日、ガムはオーストラリアのラジオ局にいた。
アダム・スペンサーがパーソナリティを務めるラジオ番組の収録のためだった。アダムはラジオで次のように言った。



「ルディガー・ガムが今日、このスタジオに来ている。彼はスーパー計算機と呼ばれる男だ」
ガムはこれまでやったことのない方法で、その能力を試されようとしていた。
「83」という数値は、ガムには事前には何も知らされていない。
彼はその累乗を瞬時にして、一つの間違いもなく言わなくてはならない。
「よく来てくれた、ガム。あんたはその能力を、高校ではなくて自分で学んだんだって?」
「高校では2週間しか、数学の授業をとっていない」



「よし、それでは始めよう。おれが、これから1つの数字をいう。それをどんどん累乗していってくれ。つまり2×2=4、4×2=8、8×2=16…というわけだ。おれはこっちでコンピュータを使って計算していき、間違いがないか見ていく。なんとかあんたのスピードについていけるようにするよ。では、83からはじめてみてくれ!」
ガムは両のこめかみを手で押さえ、計算をはじめる。
「83、6889、571787、47458321…」
「いいぞ、その調子だ、続けてくれ」
このセッションで、ガムは83の9乗まで、1つの間違いをおかすことなく、言ってみせた。このように、ガムの挑戦の日々は続いている。