シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

人間計算機 ①

johnfante2009-01-26

デジタル人工知能学事典 [CD-ROM付]

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今回は「人間計算機」と呼ばれるドイツ人のお話です。

脅威の計算能力


ルディガー・ガム(Rüdiger Gamm)は、1971年7月生まれの37歳のドイツ人。
彼は「人間計算機」と呼ばれている。
ある日、ガムは大学の授業にゲストとして呼ばれた。
「何でもいいから、2つの素数を言ってみてほしい。私はそれを割り算し、瞬時に少数点60位まで答えを計算してみせるから」とガム。
「93と107!」と学生。
「93を107で割り算してみます。0.869158878504…」
大抵の場合、オーディエンスはガムの能力を賞賛する。


ガムの能力は独特である。数学には累乗というものがある。
aをn回掛け合わせたものをaのn乗と読み、右の数字nを指数と呼ぶが、このnをいくらでも増やして、瞬時に暗算して積(an)を出すことができる。
彼はその方法を開発したという。 
また、2つの素数(1とその数以外に約数がない正の整数。2・3・5・7・…など無限にある。
100までの素数は、2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31…など)を同士を割り算すると、絶対に割り切れないのだが、これを小数点第60位まで、瞬時にいうことができる。


いじめられっ子から超人へ


しかし、子供のときは不幸だった。周囲の子供たちはガムの能力を怖れ、いつも虐めていた。
そこで、彼は自分にだけ分る言葉で言い返せるように、センテンスを逆さ向きに話す自分だけのゲームをするようになった。
小さな町で生まれたので、人々は逆さ言葉を使う彼ことを、反キリスト的だとか、悪魔だとか呼んで気持悪がった。
そして、ガムは高校を中退してしまった。


21歳のとき、特別なことが起きた。
彼はある数学の本を読んでいて、数式の表を暗記することに興味を持った。
そして、それを応用することで、複雑な計算を頭のなかで瞬時に計算する能力を手に入れた。
その2週間後から、あらゆる計算を頭で試すようになった。



ディスカバリー・チャンネルによるドキュメンタリー


その他にも、長い完結した文章を、終わりから頭へ反対向きに話すことができるようになっていた。
これはひとかたまりのセンテンスでもできるし、センテンスのなかに入っている単語を逆から発音することも可能である。
それから、カレンダーを使った瞬時の計算を得意となった。
歴史がはじまって以来のどんな日時(例 西暦837年5月30日など)でも、一瞬にして、その曜日を言い当てることができるようになった。


その1年半後、ドイツのテレビのクイズ番組に出演したことが、彼の人生を完全に変えた。
彼はテレビ番組のなかで、87の12乗を瞬時に答えて見せた。
オーディエンスから拍手の渦があがった。
ガムは生まれてはじめて、人と違うことが気持ちのいいことだと知ったのだ。


(つづく)