シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

Gunner Palace

johnfante2009-09-25

今回は日本未公開のドキュメンタリー映画「Gunner Palace」(2004)についてです。
直訳すれば、「砲手の宮殿」とでもなるでしょうか。監督はPetra EpperleinとMichael Tucker。



私がバビロン音楽祭に随行するために、経済封鎖下のイラク渡航したのは1999年でした。
この映画は2003年〜2004年のイラク戦争後のバグダッドを中心に描いています。
この映画を見ると、イラク戦争を受けても変わらない人々、変わらないモスクや市場の風景がある一方で、一番変わってしまったのは町に米軍の車両が行き来している風景となるでしょうか。


「Gunner Palace」とは、米軍が空爆した後に乗り込み、自分たちの指令系統の本部をおいた場所です。
もとは、サダム・フセインの長男であるウダイ・フセインの宮殿でした。
そのため、チグリス川に面した素晴らしい立地条件の場所に、ゴルフ場、プール、豪華な寝室などで贅沢に設えてあります。
映画に登場する将校のひとりは「一生に一度くらいは、こんな贅沢な場所で暮らしてみたいよね」と、インタビューに答えます。



「Gunner Palace」の予告編



この映画の特徴をひと言でいってしまえば、米兵の「戦場での日常」を撮ったものといえます。
ニュースの報道などでは出てこない、米兵たちの素顔と生活に密着しています。
バグダッドでも最も不安定な地域で、米兵たちは車両やタンクでのパトロール、テロの容疑者の逮捕などをしています。
時には、道に落ちたビニール袋一枚のせいで、道路を封鎖し、爆弾ではないかと過剰反応することも。


しかし、驚くのは、インタビューに答える米兵たち一人ひとりが明るいことの方です。
彼らはウダイ・フセインの宮殿でビーチ・パーティを開き、カメラの前でご自慢のラップを披露し、国歌をギターで弾いてみせます。
歩兵になっているのは、高校を卒業してすぐに入隊した20才そこそこの若者たち。
イラクで米兵の死者が〇〇名」といった数字ではなく、誰が戦争に行って、誰が死傷しているのか、その顔が見えてくる映画になっています。



公式HP http://www.gunnerpalace.com/