シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

ドクター・デス ④

johnfante2006-10-12

Harold Shipman - Mind Set on Murder: The True Story of Why Harold Shipman Was Addicted to Killing

Harold Shipman - Mind Set on Murder: The True Story of Why Harold Shipman Was Addicted to Killing


逮捕後の経緯


警察はシップマンが地域の患者から高い尊敬と信頼を得ていたためか、 前科を調べなかった。
司法解剖すべき場合でも、死亡届提出後に警察が疑いを持つことはなかった。
シップマンはカルテを偽造し、死期が近いように見せかけていたのである。
公的機関の監査がなぜできなかったのか、という非難が遺族からあがっている。


全ての女性の遺体には争った形跡がなかった。
「シップマンがイギリスで最も重い刑罰に服している以上、刑事司法がやれることは全てやり終えた」
などという開き直り的な発言が、警察関係者からは出ており、証拠となる遺体の状態が悪いものが多い点で、事件の全貌が完全に明らかになることはないだろう。


裁判の行方


1999年10月5日、シップマンの裁判が開廷された。
シップマンはマリー・ウェスト、イレーヌ・ターナー、リジー・アダムス、ジーン・リリー、イヴィ・ロマス、マリー・クィン、キャサリーン・グランディら15人を殺害した容疑で起訴された。
6日間の陪審員による審議の後、2000年1月31日に、シップマンは「モルヒネの致死量の投与で15人の患者を殺した罪」により、有罪判決を下された。


予審判事は彼に終身刑を宣告して、彼が仮釈放などで決して解放されてはならないように勧めた。
さらに、キャサリーン・グランディの遺書偽造に関して4年の刑を宣告された。
2002年2月、シップマンは医師会から正式に登録を抹消された。


患者を連続殺害した動機


何人かの犯罪の専門家は、シップマンが年長の女性ばかり殺した理由が、彼が若いときに母親の死を看取った辛い経験にあると指摘している。
他には、他人の生と死をコントロールする全能感を好んだことなどが挙げられている。
が、シップマンは、彼は罪の意識を感じていないと言い続け、自分が犯した犯罪について、いかなる声明も出さず、動機も話さなかった。


有罪判決を受けた15人の患者のみならず、まだまだ多くの患者(少なくても215人)の死についてもシップマンは法廷にかけられるべきであった。
だが、公正な裁判が難しいとされて、それ以上訴追されることはなかった。


謎の自殺

 
2004年1月13日の午前6時20分。
シップマンの58回目の誕生日の前日に、彼は独房で首を吊っているところを発見された。
シーツを使用して独房の棒から吊るした、という発表であった。
午前8時10分、彼の死亡が宣告された。
英国のタブロイドは彼の自殺を祝い、他の連続殺人犯も彼の自殺に続くべきだという、激しい論調の記事を掲載した。
死刑廃止に関していらだっている国民感情を反映したというところであろう。


あるシップマンの犠牲者の家族は「詐欺にかかった」と感じた、と言っている。
彼が自殺してしまうことで、永久にその告白を聞く可能性が閉ざされ、どうして殺人が起こされたのか、その理由や動機が分からなくなってしまったからである。
多くの人間が、彼の自殺に関して戸惑いを隠せず、憤りを覚えた。
同様に、なぜシップマンが自殺したかも謎に包まれている。
ただし、保護観察官によれば、シップマンが自殺すれば、彼の未亡人が国民年金の総額が受けられると考えたのではないか、と推測している。
 


《参考》
BBC NEWS記事など


《オススメ》

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