シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

ドクター・デス ③

johnfante2006-10-06

Harold Shipman: The True Story

Harold Shipman: The True Story


元市長の殺害事件


最後の犠牲者は、キャサリーン・グランディー(81)であった。
彼女はハイド市の元市長であった。
6月24日、キャサリーンは自宅でしたいとなって発見された。
彼女が生きている最後を目撃したのはシップマンであった。
また、シップマンは彼女の死亡診断書に署名をした医師でもあった。


キャサリーンの娘のアンジェラ・ウッドラフ(Angela Woodruff)は弁護士であった。
遺書が残されたいたことを発見したとき、そのことが不審に思われた。
なぜなら、遺産に関して娘の自分が完全に除外されており、38万ポンド(約6000万円)がシップマンへ譲渡されることになっていたからである。
アンジェラが遺書改竄を疑って警察に通報したおかげで、シップマンへの捜査が再開された。
キャサリーンの遺体は掘り出されて、検死にかけられ、モルヒネが検出された。
シップマンが9月7日に逮捕されたとき、キャサリーンの遺書を作るのに使われたタイプライターの種類が、彼が所有している物と一致した。


シップマン逮捕とその影響


この後、シップマンが死亡診断をした他の人たちについても、警察は捜査を進めていった。
15人の人間がリストアップされた。
患者にモルヒネを過剰投与して、オーバードーズで死亡させ、自分自身で死亡診断書に署名する、というシップマンの殺しのパターンが明らかになってきた。
そして、丁寧なことに、死亡した人間に関しては、健康が優れなかったことを示すための医療記録が偽造されていた。
6月24日に、シップマンがキャサリーンの自宅に往診し、血液を採取したが、その時にモルヒネを注射したものと見られている。


しかし、シップマンが殺害で金銭的利益を得たのはこの殺害のときだけだった。
この事件を起こさなかった場合、シップマンはいまだに連続殺人を続けていたかもしれない、と考えると背筋が寒くなる。
生前のキャサリーンは81歳という年齢にもかかわらず、娘の証言によれば、死の直前まで8キロ歩いても息切れしないほど元気で、週末に保養地への旅行を計画していた。
であるから、余計にその死が不自然に見えたのである。
キャサリーンは高齢者の支援活動にも積極的で、募金活動も行っていた。
「私たちより元気ね」と冗談を言い合った、と娘は法廷で述べた。


患者を大量殺害した動機は?


動機が不明確で未だ憶測を読んでいる。
が、元同僚の医師によれば、人間の生命を操ること、つまり殺害自体を楽しんでいた、という説が有力である。
金銭的利益を得ておらず、性的動機もないことから、この説が最も妥当だろう。
また、殺害の後、明晰な頭脳を余すところなく使って証拠を残さないように異常なまでの努力を払っていた。
司法解剖が行われれば、殺害が発覚するおそれがあったからだ。


1997年のデータでは、患者数1万人の近くの病院で14人の高齢女性が死亡しているが、患者数3500人のシップマンの病院で少なくとも41人が、シップマンが診察に訪れたその日に死亡している。
逮捕後の取り調べでは、毅然として全容疑を否認した。


担当検事のマイク・ウィリアムスによれば、シップマンは取調官より常に優位に立とうとし、ゲームに勝とうとしているような傲慢さが見られたという。
これは服役後も同様であった。
取調べ中も彼は捜査員に対して傲慢な態度を崩さなかった。
捜査過程で精神科医が彼と面接しているが、いわゆる「快楽殺人」であることは否定し、一種の無意識的不安回避行動であったと示唆している。