キューブリックになった男 ②
映画「Color Me Kubrick」
(2004 英国 日本未公開)より
ジョン・マルコヴィッチが演じるアラン・コンウェイ。
人々がだまされた理由
60年代後半に「2001年宇宙の旅」で有名になった映画監督のスタンリー・キューブリックは、著名人との付き合いが嫌いで、随分前から世間に出なくなっていた。
しかし、他のセレブリティたちは、そのような真空状態を嫌うものだ。
もし、キューブリックが公共の場所に顔を出したくないのならば、誰かが代わりを務めるべきだ。
コンウェイの企みが大成功を収めた理由は、彼がキューブリックに似ているかどうかとは、ほとんど関係なかったのだろう。
人々がコンウェイのことをキューブリックであると信じたのは、地球上でもっとも有名な秘密主義者である男が、彼らにだけ、その正体をこっそり明かすことにしたのだと信じたかったからである。
「私も、本当に自分がスタンリー・キューブリックだと信じ込んでいました」
と、コンウェイ本人も認める。
「私は死ぬ日まで、それを続けることができそうでした。それか、キューブリック自身が亡くなる日までか」
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先週のある夜(1999年3月)、筆者(Guardianの記者)は、北ロンドンのハロウ(Harrow)にあるフラット式の共同住宅へ行き、アラン・コンウェイの家を訪ねることにした。
「僕は彼の息子です」若い男がそう答えた。
「どういうご用件で?」
「スタンリー・キューブリックに会いたいのですが」
「彼は死にました」と彼は言い、自分はマーティン・コンウェイだと自己紹介した。
「知ってます。ほんの2、3ヶ月前のことですよね」と筆者は言った。
「父のアラン・コンウェイは死にましたが、どうぞ入ってください。父についてお話しましょう。父から聞くよりも、ずっと真実に近いことをお教えしますから」
アラン・コンウェイは1998年12月5日に、家で亡くなっていた。
ちょうど、本物のスンタリー・キューブリックが、田舎の大邸宅で亡くなる3ヵ月前のことである。
23歳の法学生であるコンウェイの息子は、窮屈なリビングへ筆者を招きいれた。息子が話してくれたアラン・コンウェイの話は、かなり複雑で、ねじくれていて、ミステリアスであった。
滑稽で、悲劇的で、奇怪で、生々しい人間のあり方を、キューブリックが作った映画なんかよりも、ずっと真摯に暴露していたのである。
その話の内容は以下である。
アラン・コンウェイの人生
アラン・コンウェイは1934年に生まれた。
本名はエディ・アラン・ジャブロウスキ。彼が友人に話したところによれば、彼はナチスの占領から逃れてきたポーランド系のユダヤ人であったという。
事実、ホワイトチャペル地区(ロンドンのイーストエンドにあるユダヤ貧民街)の生まれだった。
13歳のとき、彼は窃盗のために少年院送りになった。
人を食った自己演出の末、ジャブロウスキは彼の名前をアラン・コーンと変えた。名字のコンウェイは、後に使われるようになった、いくつかの名前のうちの一つである。彼は妻と出会うまでは、いくつもの詐欺事件で有罪判決を受けていた。
結婚後、家族は南アフリカへ引っ越したが、コンウェイがした商取引のいくつかが調査を受けることになり、イギリスへ帰らなくてはならなくなった。
それでも、英国へ戻った後、妻の助けもあって、コンウェイはロンドンのウエストエンドにあるハロウで、旅行代理店のオフィスを持つことに成功した。
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80年代後半、物事がうまくいかなくなった。
コンウェイは彼の妻を捨てて、恋人へと走った。その恋人は後にエイズで死ぬことになった。
ビジネスは崩壊し、彼はアルコール中毒になって、自分のファンタジーのなかに生きるようになった。
本物のキューブリックは、かつて「映画を見ることは、制御された夢のなかに参加する行為のようだ」と言ったが、息子のマーティンにとっては、父アラン・コンウェイの人生は、制御不能の悪夢のようであった。
妻が死んだ後、アラン・コンウェイは息子と一緒に住むことになった。
コンウェイには気分が激しやすくなる傾向があり、それによって発作を起こすことさえあった。
「父は私を身体的に虐待していた。一度など、父と彼の友人に追いかけられたため、車の前でひざ頭を骨折したことさえあります。すごい怖かったです」と息子のマーティンは証言する。
結局、社会福祉局が干渉することとなり、16歳にして、マーティンは孤児院に送られた。
「父は、ひどいアメリカ訛りで電話に出ることがありました。そして、父の友人たちは彼のことをスンタリーと呼んでいたのです」
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