シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

仮面の男

johnfante2007-09-14


タイタニック』の次の映画


タイタニック』で全世界を泣かせたレオナルド・ディカプリオが一転、池田理代子の少女漫画『ベルばら』のような悲運の主人公に挑む。
偉大な国王とその犠牲者に分かたれた双子の王子。
歴史の光と影に翻弄される二人の宿命を、レオが一人二役で演じ分ける、フランス宮廷が舞台のメロドラマなのだ。


ストーリーはデュマ原作の『三銃士』を大胆にアレンジした「その後の三銃士」。
17世紀後半のルイ14世の圧政下に、謎の囚人「仮面の男」をめぐって起こるクーデターを描く。
「傲慢なルイ14世の役作りに、レオは名声を得たスターとしての自分をモデルにした」などと、アホくさいディカプリオ神話が飛び交っているが、この手の挿話は本当に演技ができない奴にとっておいてほしい。


仮面の男


根っからの演技派?


思えば『ギルバート・グレイプ』の知的障害児役から、レオは若手演技派として注目されてきた。
処女作で共演したデ・ニーロを尊敬する、たたき上げの役者魂を持っている。
しかし、彼が素晴らしい理由は『タイタニック』とひと味違う演技の実力を見せたからだけではない。
若手演技派としてデビューしたレオが、この『仮面の男』であえてアイドルの地位に甘んじ、純粋にファンの乙女たちを喜ばせようとしているからだ。


一人二役」という、いかがわしい宣伝文句にも耐え、スターとしての自らの立場を自覚し、演じきったレオは大人ではないか。
そのおかげか、『仮面の男』はウェルメイドのアイドル映画に仕上がっている。
全編レオ一色といった印象で、宝塚スターなみに衣装替えをしたりとサービス満点。
その千両役者ぶりにファンならずとも、黄色い声援が飛ぶに違いない。



初出 : 「週刊SPA!」


関連資料


仮面の男―仮面の男とその背景 (竹書房文庫)

仮面の男―仮面の男とその背景 (竹書房文庫)


『伝説の中でこれだけは真実。フランス革命で蜂起した民衆が、バスティーユ牢獄を破壊した時、彼らは、その記録文書の中に“囚人番号:64389000:仮面の男”という謎の人名を発見した。
その囚人の素性は、今も謎に包まれたままである』―17世紀“太陽王ルイ14世統治下のフランスで、かつて先王の親衛隊として数々の武勇伝を残した三銃王、アラミス、アトス、ポルトスはそれぞれに平穏な生活を送っていた。
そして、もう一人の銃士、ダルタニャンだけが、銃士隊長としてルイ14世に仕えていた。だが、若き新王ルイ14世は、権力に憑かれた悪の化身となりさがり、度重なる戦争に国の財政は傾き、国民は飢えに苦しめられていた。
一方、王には、決して誰にも知られてはいけない秘密が…。レオナルド・ディカプリオが自堕落な国王と数奇な運命を辿る沈黙の犠姓者という歴史と伝説の間を揺れ動く2つの顔を、確かな演技力と繊細な表現力で熱演する話題の最新作『仮面の男』の原作小説。その関係資料と、映画のカラー写真多数を合わせて収録。
(「BOOK」データベースより)