シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

ペレ ②

johnfante2009-03-27


NYコスモス


ペレは74年にサッカー選手を引退するが、翌年にワーナー社のスティーヴ・ロス率いるNYコスモスに入団。
多額の契約金でブラジルの至宝を米国が買収したと国際問題になる。
『ペレを買った男』は、ペレやベッケンバウアーらスターを世界中から集め、コスモスがドリームチームとなっていく過程をソウル音楽にのせて描くドキュメンタリー。
だが映画が対位法的に強調するのは、ペレの名声と企業の経済力でサッカー文化を商業化しようとした米国の姿である。



『ペレを買った男』予告編


結局コスモスは解散して北米リーグは消滅する。
その後ペレはこの報酬を元手にビジネスで成功し、ブラジル初の黒人閣僚を務める。
メディアの偶像という立場を自覚したペレはそれを逆利用し、隠し子問題や息子の麻薬事件などのゴシップを経験するも、持ち前の華麗なステップで現代社会を泳ぎ切る。
いま『ペレ自伝』で率直に事業の失敗やパイプカットの事実を語る人間ペレの姿は、ピッチにいたときよりも輝いて見える。


映画と本で読むペレ


勝利への脱出 [DVD]
ナチス収容所の捕虜たちが、ドイツ代表とのサッカーの試合に紛れて脱走を計画する『勝利への脱出』。
ペレは選手役で出演しオーバーヘッド・キックを決める。


ペレを買った男 [DVD]
『ペレを買った男』は、ソウル音楽にのせて軽快に見せるスポーツ・ドキュメンタリー。
70年代のアメリカでワーナー社が巨額の資金を投入した、ドリームチームの繁栄と衰退を描く。


ペレ自伝
サッカーの王様が少年時代、サッカー人生、引退後のゴシップまで驚くべき率直さでつづる『ペレ自伝』。
個人の伝記でありながら、一つのブラジル現代史ともなっている。



初出:「週刊SPA!」