シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

南京 引き裂かれた記憶

johnfante2010-01-09

1月末に発売される『映画芸術』は、毎年恒例のベストテン&ワーストテン号。
ここで、どうしてもベストに入れたいと粘ったのが、『南京 引き裂かれた記憶』だ。



『南京 引き裂かれた記憶』予告編


松岡環さんという活動家の方が、10余年にわたり、中国側の南京大虐殺の被害者と元日本兵を探し出し、独自に取材を続けている。
カメラはその取材に随行するような形で、7人の被害者と6人の元日本兵のインタビューに成功する。


クロード・ランズマンの『ショアー』の肌合いに近いものがあるが、集合的な記憶を醸成するような仕掛けがあるわけではない。
いわば当事者の証言を集めたインタビュー映画であり、映画は淡々と彼らの言葉を集めていく。
ただ、証言者たちによる虐殺・強姦の実態をあらわにする語りは、凄まじい迫力があり、それだけで充分に映画的である。
特に加害者であった元日本兵たちの証言を集めたところが凄いし、その内容も想像を超えるものである。




「子どもだろうが老女だろうが、目に入る女は片っ端から強姦した」
「明日、戦場で死ぬかもしれないのだから、やっておきたいんだよね、兵士は」
「女性経験のない若い兵士たちよりも、徴兵されてきた妻帯者たちの方が率先して強姦をした。女性の味を知っているから我慢できないんだよ」
「人間があのような状況に置かれたら、そうなるのは仕方がない」


自分たちの責任ではないかのごとく、居直ってしゃべる元兵士たちに途方もない怒りを感じるが、同時によくぞカメラの前で証言してくれたものだとも思う。
これまでに何本もの南京虐殺についてのインタビュー映画がなかったことの方が問題だが、ビデオ・ドキュメンタリーの時代になったからこそ撮れたのかもしれない。
いま現在、日本の侵略戦争の証言者たちは高齢をむかえ、次々と亡くなっているに違いない。
できるだけ多くの人にインタビューをして、記録を残しておかなくてはならない。


南京戦 閉ざされた記憶を尋ねて―元兵士102人の証言


南京大虐殺に対して少しでも疑義を抱いている人、全員に見てもらいたい映画である。
名古屋のシネマスコーレから始まった上映運動が、徐々に全国へ広がっていった形態にも注目したい。
映画館に限らず、各地で上映会が開かれている様子なので、興味がある方はHPをチェックして頂きたい。


映画ホームページ  http://nanking-hikisakaretakioku.com/
公式ブログ  http://nanjinghikisakaretakioku.osakazine.net/