シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

『ビルマVJ』

johnfante2010-06-03


ビルマVJ』は今年のあらゆる映画の中で、最高傑作というのにふさわしい。
<VJ>とは、ビデオ・ジャーナリストのこと。
この映画を見た後では、小型ビデオカメラという機械がこのミャンマーでの革命を映すために生まれてきた、と誰もが信じざるをえないだろう。


日本でもジャーナリストの長井健司さんが、ミャンマーの軍人に射殺されたことが報道されて注目を浴びた、2007年9月のヤンゴンで起きた10万人の民主化要求デモ。
2000人の僧侶が群集を率い、19年間、軍の圧制に耐えてきた人たちが遂に立ち上がり、街頭へ繰り出して民主化を要求した。
しかし、軍部は兵士を送り出し、民衆へ銃を向けて射殺しはじめた。



その裏で、小型のビデオカメラを片手に、その様子を海外メディアへ送り続けるビデオ・アクティヴィストのチームがあった。
その名も<ビルマ民主の声>。
複数の人数で撮った映像や音声を秘密の本部へ集め、それを衛星を使って海外メディアへ届け、それはすぐに全世界のCNNやBBCでオンエアされる。
しかし、僧侶たちは連れ去られて拷問の上に虐殺され、彼らの元にも秘密警察の手が伸びていた…。


一時間半、ずっと興奮しっぱなしだった。
特に、長く押し付けられてきたミャンマーの人々のために、僧侶たちの長い列が立ち上げる瞬間は感動で大泣き。
後半の秘密警察の捜査から逃げるために、隠れ家を転々とする描写もすごい緊張感だ。
そして何よりも、ミャンマーの人たちを押さえつけ、デモ隊に射撃する兵士と、その裏にいる軍政の将軍たちに強い怒りを覚えざるを得ない。