シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

『狂犬ジョニー』 エマニュエル・ドンガラ

johnfante2010-04-13

近々公開される西アフリカのリベリアを舞台にした『ジョニー・マッド・ドッグ』の映画評を書いたのだが、むしろ興味は原作者のエマニュエル・ドンガラの方へ行っている。
原作はコンゴ内戦が舞台となっているのだが、フランスの映画製作者たちは舞台をリベリアへ移植した。
その意図は明白であろう。



『ジョニー・マッド・ドッグ』予告編


リベリアアメリカ南部から移民してきた黒人解放奴隷たちが建国した、いわば黒人奴隷たちのアフリカ帰還の地なのである。
原作の『狂犬ジョニー』は本邦未訳なのであるが、英語版が出ていたので手に取ったら一息に読んでしまった。
内戦を背景に、暴走する少年兵のグループと、暴力から逃げ続ける少女の二視点から書いている。
少年兵たちの渾名や行動の端々に、アメリカ性が散見されるところも興味深い。



『狂犬ジョニー(Johny Mad Dog)』


原作者のエマニュエル・ドンガラの翻訳書は、『世界が生まれた朝に』の一冊しか刊行されていない。
ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を下敷きにして、コンゴに生まれ、偉大な呪術師となっていく男の一代記である。
アクション映画仕立てになっているのが、何とも勿体ないが、映画をきっかけにして、このアメリカへ亡命中の作家の作品が広く紹介されるようになるといいと思う。