シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

フローズン・リバー

johnfante2010-01-16

まだ1月だというのに、今年のベスト1になるような映画を見てしまいました。
サンダンス映画祭でグランプリをとったコートニー・ハント監督の『フローズン・リバー』です。
1月末に劇場公開です。



フローズン・リバー』予告編


雪が降り積もるニューヨーク、カナダ、モホーク族の自治区が隣接する国境地帯。
ギャンブル中毒の夫が金を持って失踪し、取り残された中年の白人女性レイは、2人の子どもを抱えて途方にくれている。
パートタイムの仕事しかなく、クリスマスが近づくというのに、不動産業者の取立てが厳しい。
そんななか、義理の母に親権を奪われて、ひとりトレーラーで暮らすモホーク族のライラという女性と知り合う。
二人は金銭的な必要から、カナダとの国境に横たわる氷りついた川を超えて、ある犯罪に手をそめるようになるが…。



今年のアカデミー賞の主演女優賞、脚本賞の2部門にノミネートされている秀作。
映画としての肌合いは、ジャン=ピエール&リュック・ダルテンヌの映画に似ているか。
特に冒頭のシークエンスで、息遣いが聴こえそうな至近距離から、ワイドレンズで混乱した女性を追いまわす感じは、本当に彼らがアメリカ映画を撮ったのかと見まがうほど。
ないようで厳然と横たわるアメリカ、カナダ、インディアン・リザヴェーションの国境問題の取り上げ方がエレガント。


普段の生活では、互いに見て見ぬふりをして生きているような、白人とモホーク族の女性が共犯関係になるという設定もいい。
あえて難をいえば、母親の心情という普遍性にあまりにも寄りかかっていることくらいか。
告発のとき』『さよなら。いつかわかること』『グラン・トリノ』以来、久しぶりにアメリカ産の重厚な人間ドラマを見せてもらった。
こういうことがあるから、アメリカ映画を見ることが止められないのである。