シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

テロルの回路

johnfante2006-06-30

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足立正夫全映画上映会


 先日、新宿の酒場で、映画評論家の松田政男さんに会った。オレの尊敬する活動家のひとりだ。話をしていたら、岡本公三グループ解放のXデーが決まったという。2000年の3月6日だ。
 パレスチナ革命の英雄である岡本や足立正夫らは、97年の5月から、ビザの関係でレバノン当局に逮捕され、ルミエ刑務所に服役している。
 松田さんによれば、出所後に強制帰国になれば岡本は死刑確実で、グループの5人はレバノンに亡命の希望をだしたという。

 そこで、11月にサンコーさん(木村代表)とユーゴスラビアにわたったオレは、政府首脳との晩餐会の席で、ユーゴスラビアの副総理に訊いてみた。
「もし岡本公三グループが亡命を希望したら、ユーゴ政府は受けいれますか?」
すると、副総理は飲んでいたトルコ・コーヒーをブッと吹きだし、「とんでもない!」と、その場で政府見解をだしてくれた。


 帰国したところ、「足立正夫全映画上映会」の計画を知った。
足立の『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』(略称『赤P』)を観たとき「こいつはテロ映画史上、最高のフィルムだ!」とオレは思った。
テロ映画には二種類ある。テロリストがコテンパンにやられるアメリカ映画と、本物のテロリストが作った政治映画だ。むろん『赤P』は後者のほうである。


オレはテロリストや革命家が、国家権力に成敗される映画は大嫌いだ。
『赤P』は、七一年にフランスの映画祭に行った若松孝二と足立が、帰りにベイルートに寄り、現地の日本赤軍の協力をえて撮りあげた奇跡的なドキュメントだ。
このあと、映画ではもの足りなくなった足立正夫は、パレスチナ革命に身を投じるため日本を旅立っていく。もっとデカイ喧嘩を求めている人には必見の、アラブの砂漠の嵐がここには映っている。
(2000年3月1日〜17日までシネマ下北沢にて上映された。劇場ロビーでは、足立正夫が獄中で描いた絵画がみられる「ベイルート5獄中絵画展」が開かれた。)


初出 「レコンキスタ