シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

「ハリウッドランド」の真相 ①

johnfante2007-05-20

ハリウッドランド [DVD]

ハリウッドランド [DVD]

スーパーマンの呪い


映画『ハリウッドランド』が公開される。
テレビシリーズのスーパーマンクラーク・ケント役の俳優ジョージ・リーブスの死の謎に迫るミステリーだ。
事件を追う私立探偵にエイドリアン・ブロディが扮して健闘しているが、元はベニチオ・デル・トロが演じる予定だっただけに、ハードボイルドな男臭い役柄である。


その前に振り返っておかなくてはならないのは、19年ぶりに製作され、2006年夏に公開されたスーパーマン映画の新作『スーパーマン・リターンズ』。
映画化にあたって、ジュード・ロウジョシュ・ハートネットアシュトン・カッチャーら、ハリウッドの人気俳優にスーパーマン役の声がかかったが、巨額の出演料であるにもかかわらず、彼らは「スーパーマンの呪い」を怖れて断わり、結局ほとんど無名のブランドン・ラウスの主演になったという。
人々が怖れる「スーパーマンの呪い(Superman curse)」とは、いったい何なのか?
(下は映画『ハリウッドランド』の予告編)



最初の話はコミックから始まった。
1930年、原作者のジェリー・シーゲル作画家ジョー・シャスターにより、『スーパーマン』が生み出されたが、著作権は雇用主であるDCコミックが持った。
46年に、2人の作者は正当な利益配分が行われないことを理由にDCを告訴。これに対して裁判所は2人への配分として6万ドルしか認めなかった。
スーパーマンの関連商品が上げていた数百万ドルの売り上げにとって、これは端金に等しい金額であった。原作者2人の不公正への怒りによって、スーパーマンの呪いが生まれたとも言われている。


その後、「スーパーマン」の映像作品に関わった俳優やスタッフの身に、次々と災厄が降りかかった…。


降りかかる不幸の数々


喜劇俳優リチャード・プライヤーは、83年の『スーパーマン3』で最初はスーパーマンと敵対するが、後に協力者に転ずる天才プログラマーを演じた。その3年後、プライヤーが多発性硬化症に冒された。2005年12月10日、プライヤーは心臓発作により死亡した。
『スーパーマン2』(80年)と『スーパーマン3』(83年)の監督であるリチャード・レスターは、89年に自分の映画の撮影中に起きたロイ・キニアーの事故死に衝撃を受け、監督を廃業した。キニアーは乗っていた馬から転落して骨盤を骨折し、その結果、失血死した。


78年の『スーパーマン』でスーパーマンの赤ん坊時代を演じたリー・クイグリーは、91年3月に有機溶媒の吸入する事故により14歳の若さで亡くなった。
80年代の『スーパーマン』4部作でスーパーマン役を演じたクリストファー・リーヴ。彼はクロスカントリー競技中に落馬して首を骨折し、半身不随となった。04年10月10日に、リーヴは長年の車椅子生活に起因する心臓発作で亡くなった。
スーパーマンの恋人ロイス・レーンとして、リーヴの相手役を務めたマーゴット・キッダーは、激しい双極性障害躁鬱病)に陥り、96年4月に数日間失踪した後に、偏執症の発作を起こしている状態で警察に保護された。


そのなかでも、最も謎なのはジョージ・リーブスの自殺である。ジョージ・リーブスは51年の映画『スーパーマンと地底人間』に主演し、その後、51年から58年までテレビ版『スーパーマンの冒険』でスーパーマンの役を演じた。
名前は知らなくても、日本でも放映されたので多くの人が彼の姿を見ているはずだ。
1959年6月16日、結婚を数日後に控えた日のこと。リーブスは自宅で自殺しているところを発見された…。


スーパーマン、死す


全米に衝撃が走った。特に子供たちのヒーローだったので、彼らの落胆にしようといったらなかった。
つい先日までテレビのなかで活躍していた「鋼鉄の男」が、死んでしまったというのだ。
彼はハリウッドで成功をつかみかけており、約束された未来が待ち構えている矢先のことだった。
彼はアメリカでは、大統領と同じくらいの名声を勝ち得ていた。翌年の60年からは、スーパーマンの新シーズンがはじまるところだった。


午前1時30分、ジョージ・リーブス(George Reeves 本名George Keefer Brewer)はビバリーヒルズにある自宅の2階の寝室で、こめかみを撃ちぬいた銃弾による傷で死亡した。45歳だった。
警察は1時間以内に到着した。リーブスが死んだとき自宅にいたのは、婚約者のレオノラ・レモン(Leonore Lemmon)、ウィリアム・ブリス、執筆業のロバート・コンドン、それにキャロルだった。キャロルは数ブロック離れたところに住む脚本家リップ・ヴァン・ロンケルの妻である。


スーパーマン リターンズ 特別版 [DVD]


彼ら目撃者の情報によれば、その夜、リーブスとレオノラはコンドンを連れ立ち、レストランへ食事に出かけた。しかし、婚約者たちの口喧嘩が始まり、3人は自宅へ戻ってきた。
リーブスは寝室へ入った。真夜中近くになり、ブリスとキャロルがやってきて、ちょっとしたホームパーティになった。
リーブスは階段を下りてきて、しばらくの間客たちと酒を飲んでいた。それから不機嫌になって2階の寝室へ引き上げた。


しばらくしてから、客たちは1発の銃声を耳にした。ブリスが寝室へ駆け上がると、リーブスは裸のままベッドに倒れていた。
顔は仰向けで、足は床へ伸びていた。
警察は現場検証の結果、リーブスが自分の頭を撃ちぬいた後、身体が背後に倒れ、銃が彼の足の間に落ちたものだと結論した。
警察は目撃者たちに話を聞いたが、人々はショックのためか混乱していたという。


レオノラはリーブスの自殺は彼が望むような役を得られず、キャリアにおける失敗からきた鬱によるものではないか、と証言した。
自殺だと考えられる要因は他にもあった。リーブスは死の3年前にあたる56年に遺書を残していた。これはレオノラを驚かせるのに十分なものだった。
リーブスの自宅を含む不動産をトニ・マニックス(Toni Mannix)にという女性に残すというのだ。
トニ・マニックスはハリウッドの巨大な映画会社MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の重役であるエディ・マニックス(Eddie Mannix)の妻。
リーブスの自宅はトニ・マニックスから与えられたものであったのだ。



映画「ハリウッドランド」オリジナル・サウンドトラック


オリジナル・サウンドトラック・スコア「ハリウッドランド」