シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

米国史上最高額 ダンバー社強奪事件 ②

johnfante2007-10-06

オーシャンズ11 特別版 [DVD]

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犯行の夜


1997年9月12日の朝、アレン・ペースに予期せぬ電話が入った。会社に解雇を言い渡され、鍵の返却を求められた。決行するなら今しかない。
アレン・ペースはその日、仲間に電話して告げた。決行は今夜だと。ユージーン・ヒルは計画通りにレンタカー屋でトラックを借りた。
最初の障害は建物の外にあった。内部に進入するには、入口のカメラを避けて通れない。アレン・ペースは安全管理者の同僚をだまし、この問題を解決していた。


同僚は新しいトラックを買ったところで、非常に大事にしていた。
その同僚は金庫室の警備を担当しており、モニターで外の監視カメラの様子を見るのが仕事だ。同僚はトラックを毎晩同じ場所に止めていたので、彼のトラックが映るようにカメラの角度を変えてやった。それで死角ができた。
仲間はアレン・ペースからカメラの位置と角度を聞いており、壁伝いに簡単に入口へとたどりついた。あとはアレン・ペースの鍵でなかに入るだけだった。



オーシャンズ12」の予告編


アレン・ペースと仲間たちは全員、黒い服を着て、目出し帽で顔を隠し、銃を持っていた。お互いを名前ではなく、番号で呼び合った。「ナンバーワン、入れ」というように。
中に入ると廊下にカメラがあったが、絶えず向きを変えるものだった。アレン・ペースがその間隔をはかった結果、カメラに映らずに通れる瞬間があった。
カメラが反対方向をむいている間に、映ることなく、順番に廊下を進んでいった。一歩まちがえれば、仲間ともども20年の刑を食らうところである。
 建物に入る鍵はあったが、金庫室の鍵は持っていなかった。しかし、安全管理者の同僚の習慣を知っており、彼らの休憩時間に合わせて強盗に入った。
金庫室の鍵を手に入れることに成功した。あとは同僚たちを待つだけだった。中には避けられない監視カメラも待っている。


いざ襲撃


警報が鳴る前に、警備員を襲う必要があった。銃を持つ警備員は2人以上はいない。
彼らのいる警備室さえ抑えれば、建物はアレン・ペースたちのものだった。警備員に銃口をむけて床にうつぶせにし、床以外に目を向けたら頭を撃ちぬくと脅した。
手を後ろに縛られ、犯人が見張っていたので、警備員たちも動けなかった。警備室を占拠したので、ドアや門を開けられるようになった。ドアを開けてトラックをなかに入れた。
厚さ約45センチの扉の金庫に、どう入ったのか。歩いて入るだけだった。金曜の夜、金庫は空いていた。週末の買い物客に向け、現金を準備するためだった。
首謀者であるアレン・ペースは金庫のなかに入り、盗む現金を選んだ。金庫内の現金は仕分けられていて、高額紙幣のありかを知っていた。小企業のために保管している小額紙幣には、手を触れなかった。
高額紙幣のみ、保管場所から多額の現金を盗みとっていった。連続番号の新札は足がつきやすいので、避けた。


時間がかかるほど、警察や会社の警備員に捕まる危険が増す。
しかし、まだ仕事が残っていた。録画装置のある部屋に行き、それらの機器を持ち去ることだ。金庫室での彼らの姿が映っているからである。
1つは管理者の部屋にあったが、予備の装置は金庫室から離れた部屋にあった。施錠した事務所の棚のなかだった。探すのに普通1時間はかかるが、犯人たちは30分もせずに見つけていた。
なぜ予備装置の存在を知っていたのか。アレン・ペースの恋人はダンバー社で働いていたことがあり、予備の録画装置のテープを交換するのが彼女の仕事だった。彼女が情報を漏らしたのだろうと捜査当局は考えている。
「早く来い」
「乗れ、行くぞ」
「ナンバーワン、出してくれ」
 銃を一発も撃つことなく、彼らはアメリカ史上最高額の強盗に成功した。現金強奪はこの計画のなかでも、簡単な部分であったのかもしれない。