シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

バンク・ジョブ ①

johnfante2008-09-09

バンク・ジョブ』 11月公開予定


奪ったブツは、キャッシュとダイヤと王室スキャンダル。
封印された英国史上最大の銀行強盗事件。
今回は映画の元になった実話を掘り下げていきます。


監督: ロジャー・ドナルドソン(『世界最速のインディアン』)
出演: ジェイソン・ステイサムサフロン・バロウズ
(原題 The Bank Job/2008年/イギリス/110分) 公式HP http://www.bankjob.jp/


Dノーティス発令


1971年9月12日月曜日。
ロンドンのベーカー街にあるロイズ銀行で、朝、出勤した銀行員が地下の貸金庫室を明けてみたら、金庫の中身がごっそり盗まれていた。
犯人たちは銀行が閉まっている日曜日の間に、盗み出したのだった。


被害にあったのは、推定50万ポンド(約1億円)の現金や宝石。
しかし、後に判明したところでは、300万ポンド(約6億円)が盗まれていた。これは1971年の時点では、イギリスで最高額の銀行強盗事件だった。
次の4日間、この話題は新聞を支配した。「ベーカー街のもぐらたち」と、見出しのひとつはつけた。それから、突然、物語は消えた。
最後のレポートは、9月16日の木曜日だった。それから、長い沈黙があった。



映画『バンク・ジョブ』の予告編(英語版)


警察も、マスコミも、この事件について一切語らず、最初から「なかったこと」になったのだ。
それは英国政府からDノーティス(国防機密報道禁止通達)が出たからだ。
Dノーティスは軍事、国防上の機密に触れる事態を封殺する特殊法令で、歴史上数回しか発行されたことがない。
この銀行襲撃事件が、なぜそれほどの国家機密になったのか?


準備段階


ジョージ・マッキンドー(George McIndoe)と3人の仲間たちは、この強盗の準備に数ヶ月を費やしていた。
ジョージたちは作業をはじめる前に、山高帽をかぶり、ピンストライプのスーツを着て、目当てのロイズ銀行へ行った。
そして、壁から貸金庫までの正確な距離を、傘を使って計測した。
そうやって、どれだけの長さのトンネルを掘るべきか、間違ったところに穴が出たりしないように計算したのだ。


ジョージと3人の仲間たちは、40フィート(約12メートル)のトンネルを掘るつもりだった。
ロイズ銀行の近くの「Le Sac」という、皮革製品やハンドバッグを扱う店の地下室に2部屋を借りた。そして、その地下室から掘りはじめた。
「実際にトンネルを掘る作業は3週間かかりました。なぜなら、銀行の人間や店の店員に聞かれたりすると困るので、私たちは週末にしか掘れなかったからです。金曜日の夜にそこへ行き、月曜の朝まで掘り続けるということをしました」 
と、ジョージは「ミラー誌」の独占インタビューで語っている。


事件の当日


9月11日、土曜日の夜。
ジョージたちは銀行から二軒目の「Chicken Inn」レストランの下を掘り進んでいった。
銀行の金庫室の壁まできて、ジョージたち強盗団は、工作機械用の熱槍を使用した。
それで金庫室の床を占める、3フィートの厚さの鉄筋コンクリートを貫いて、穴をあけようとした。


「私たちはその時に見つけることができた、最も高電力のドリルを使っていました。しかし、鉄筋コンクリートを貫くのには、十分に強力ではありませんでした。結局は、爆薬で強行突入しなければならなくなりました」
銀行の警備担当者たちは、床からは金庫室に入り込めないと考えていた。
だから、床のコンクリートにはアラームシステムが配線されていなかった。


12フィートのトンネルと3フィートのコンクリートを掘り出すために、ジョージたちは8トン近くの土石を運び出した。
「しかし、爆薬でようやくやってのけたとき、体は穴を通り抜けることができず、頭だけがなかに入れるといった按配でした。しかし、体の小さなメンバーがなかに入り、箱を次々とつかんできたのです」