シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

戦車が街を破壊する ②


タンク・ガール【字幕版】 [VHS]


映画『タンク・ガール』は1996年製作の映画。イギリスのコミックが原作。

街を走る戦車


20人以上の警察官が戦車を追ったが、パトカーと戦車ではパワー不足で止めることができなかった。
戦車は6つの住宅街を横切り、色々なもの破壊しながら進んでいった。
パトカーはそれが暴れても安全な場所へと、何とか誘導しようとした。
しかし、警察官たちは、破壊活動ただ見守るしかなかった
ときどき運転手が戦車の上部から顔を出して確認し、それから施設の柵を破り、携帯電話電波塔、通信中継小屋、送電変圧所などを次々と破壊していった。
この影響で、シドニー西部の携帯電話サービスに大きな混乱が生じた。



すさまじい破壊の様子(動画)


騒ぎがおさまったのは、カーチェイスがはじまって2時間後の午前4時のこと。
戦車が7本目の電波塔を壊そうとして、しばし停まったときのことだ。戦車は故障したように見えた。
警察は男を鎮圧するために、唐辛子スプレーを使用した。男は警官にまず頭をつかまれ、戦車から引きずりだされた。
Mount Druitt署の主任捜査官ガイ・ハーブリー(Guy Habberly)によれば、容疑者の男は飲酒もドラックもやっていなかったという。
事件に巻き込まれた携帯電話電波塔は、警察の現場検証が終了するまで修理技術者の立ち入りができなかったため、周辺地区の携帯電話がしばらく不通になった。


事件の翌日


朝起きて、テレビのニュースをつけたグレッグは、目玉が飛び出るほど驚いた。
テレビからは、自分の所有する戦車がシドニーの街中や住宅街を走りまわり、次々と電波塔をなぎ倒していく映像が流れていた。
「ジョンにちがいない。あいつは通信会社に仇討ちをしたのだ」とグレッグはとっさに思った。
ジョンは装甲輸送車の改造をした中心人物で、戦車をどのように起動して操縦すればいいのか熟知していた。
「ジョンは会社の労災認定に不満を持っていた。それから、通信会社のために電波塔の近くで長年働かされて、健康被害を受けたとも言っていた。彼は地図を詳しく調べて、どの電波塔を破壊すべきか決めていったのだ」



破壊に使われた戦車


はたしてグレッグが考えたように、戦車で破壊されたのは電話会社「ハッチンソン・コミュニケーションズ」の通信施設と、「オプタス携帯会社」の電波塔ばかりだった。
どちらもテルストラ社に属する小会社である。
ジョン・パターソンは警察に逮捕された。
 ジョンは器物損壊、家宅侵入窃盗、略奪運転、凶器による公務執行妨害など数々の容疑(合計15件)で起訴された。
彼は保釈の申し立てをしたが、裁判所によって却下された。
保釈請求を却下した判事は、顔に傷を負っているパターソン容疑者に医療処置を受けるようにと勧告した。
パターソンの弁護人であるイヴァン・バートイア(Ivan Bertoia)は、ジョン・パターソンと面談した。
「このようなことをする十分な理由と権利が自分にはあった」とジョンは言い張った。


さまざまな余波


事件から2日後、シドニー地方裁判所は、戦車が破壊した市の所有物について、5万ドル(約4・5億円)の修理代の請求書が届いていると発表した。
この事件が話題になり、テルストラ社も黙ってはいなかった。
同社のスポークスマンは、携帯電話の電波タワーから出る電磁波は、健康被害にはまったく影響ないと発表した。
「タワーから出る電磁波はものすごく低いのです。オーストラリアが定めている数値より、ずっとずっと低いことが分かっています。また、電子レンジやAMラジオなど身の回りにある家電製品より低いんです。WHOも携帯電波塔と健康被害には、何の相関関係もないと結論づけています」
電波塔1本には推定で数百万ドルがかかっているので、こちらの被害も甚大だった。



映画『タンク・ガール』予告編


グレッグは戦車を保険には入れてなかった。
「まさか、誰かが戦車を盗むなんて、考えてもみませんでしたから」 
 戦車はリフォーム後、それぞれ100万ドルで売れる価値になっていた。
「内側はめちゃめちゃです。フェンスやらポールやらにのぼったので、外は傷だらけで、中身はみんな壊れてしまいましたよ。でも、これはジョンにとってやらなくてはならない戦いだったのかもしれません」


グレッグは戦車の修理代に、およそ6万ドルがかかると見積もっている。
彼はこの戦車を改造して、結婚式のお祝いのときやトラックショーのために有料で貸し出していた。
戦車は子供たちのためのショーに貸し出される予定だったが、改造に何年もかかっただけに、1年ぐらいは使えないかもしれないという。
ジョンは、9月28日に裁判所に再び出廷することになっている。
どのような理由があったにせよ、街中を戦車で走るような真似はしてはならない。
彼には塀のなかで反省するのに十分すぎるほどの時間が、裁判の判決によって与えられることだろう。



Tank Girl: The Odyssey (Tank Girl (Graphic Novels))

Tank Girl: The Odyssey (Tank Girl (Graphic Novels))

映画『タンク・ガール』の原作コミックは、ジェイミー・ヒューレットとアラン・マーティン。ゴリラズのPVやアルバム・ジャケットなどでも有名。