シュガーランドの陰謀 ②

Murder by Family: The Incredible True Story of a Son's Treachery and a Father's Forgiveness

上は妻と次男を殺され、長男と共に傷を負った夫ケヴィン・ウィッテカーの書いた著書。

残された者の怒り

結局、父ケントと兄バートだけが生き残った。母親と次男は死んでしまった。
彼らの悲しみは怒りへとむかった。「誰がやったのか、必ず突き止めてやる」と。
悲劇的な事件の5日後、母と弟の葬儀に、ウィッテカー家の親戚や友人が1000人以上集まった。
その場で人々は不幸中の幸いだと、生き残った2人を祝福した。
その一方で、殺人者がまだ世間に野放しになっていることについて、口々に怒りの言葉を吐いた。

スロット刑事は生存者に事情聴取を続けた。
父ケントは事件のショックと家族を失ったことの悲しみを乗り越えて、捜査に全面的に協力した。
しかし、重傷だったので、スロット刑事に請われて、変わりに長男のバートが犯行現場へ行き、事件の夜起きたことを説明した。
バートは感心するほど、うまく再現してくれた。

ターニング・ポイント

一つだけ引っかかる点があった。バートはスロット刑事にサム・ヒューストン州立大学を卒業したといった。
だが、刑事が裏をとったところ、バートは休学中だった。
そのことを後日、問いただすと、「学校のストレスから少し休む必要があったんです。ただ、家族をがっかりさせたくなくて」と答えた。
幸福な家庭にありがちな悩みだな、と刑事は思った。

同じく銃撃事件の5日後に、一つのターニング・ポイントがあった。
夜11時半に「話がしたい」という男が訪ねてきて、スロット刑事は警察の駐車場で会っていた。
それはアダム・ヒップ（Adam Hipp）というバートの旧友だった。
アダムはスロット刑事に、家族が銃撃された事件が強盗の犯行ではなく、殺意のある犯人によって計画された殺人ではないか、といった。
もともと警察は強盗と計画殺人の線で進めていたが、目撃者も少なく、捜査は遅々として進まなかった。

バートの失踪

事件の7ヶ月後のある夜、銃撃事件の当の被害者であるバートがナイトクラブに行くと父親のケントに言ったまま、失踪してしまった。
バートは無法者のようにメキシコへむかい、テキサス国境から40マイルのところにあるセラルヴォ（Cerralvo）という町に移り住んだ。
そして、バートは家から持ち出した7000ドルの金で新しい人生をはじめた。その町で、小さなアパートを見つけた。
シンディ・ルー・サリナス（Cindy Lou Salinas）はバートと教会で出会い、デートした後、バートが父の小さな家具店で働きはじめた。
バートは肩の傷を、アフガニスタンの戦場で得たものだといった。サリナス家は彼のことを受け入れた。
14ヶ月の間、彼はそれまでとまったく違った新しい人生を送っていた。

ケヴィン本人が犯罪現場を見せて、事件の説明をする著書の広告ビデオ

バートの失踪に捜査当局は混乱した。バートにはクリス・ブラッシャー（Chris Brashear） とスティーヴン・シャンペーン（Steven Champagne）という親友がいた。
捜査陣は2人に事情を聴くと同時に、詳しくチェックすることにした。
2人は殺人の数ヶ月前に、カントリークラブでバートと働いていた。クリスはバートの大学のルームメイトでもあった。
スロット刑事は2人に、サンプルをとりたいといって血液を採取した。刑事の勘は見事に当った。
警察犬はクリスのにおいが、ウィッテカー家の引きだしと銃に残ったにおいと同じだと示したのだ。
クリスを厳しく尋問すると、彼は強く否定したが、銃器とのつながりの証拠があると告げると、彼の顔に恐怖の色が浮かんだ。

実行犯の逮捕

スロット刑事の捜査は、クリスとスティーヴンに集中した。結局、スティーヴンが先に自白をした。
クリスがウィッテカー家全員を銃で撃ち、スティーヴンが逃走のドライバーをしたというのだ。
スティーヴンは彼らが証拠品を捨てた、コンロー湖の場所に刑事を案内した。
銃器入れを壊すのに使った彫刻刀と弾薬、それに2台の携帯電話が出てきた。

2005年9月。事件から2年が経とうとしていた。
警察はクリスとスティーヴンを殺人容疑で逮捕した。彼らの動機いったい何だったのか？　
バートをメキシコへ連れて行くのを3000ドルで手伝ったルディ・リオスという男が、警察に名乗りでてきた。
メキシコの警察がバートをテキサスの国境まで連れてきたとき、スロット刑事はようやく捜査に終わりが見えたことを悟った。