- 作者: 山田亮太
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 2009/05
- メディア: 単行本
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アート・サンデー
新宿のル・タンというバーで、毎週日曜にアート・サンデーというイベントが組まれている。
新宿駅から徒歩3分の地下にあり、店内には宇野亜喜良のすばらしい壁画がある。
http://www.artaraqasia.com/letemps.html
普段は、ライブ・ペイントや音楽がメインなのだが、先日、若き詩人たちの朗読の試みが開かれた。
そのときに山田亮太の朗読を聴いた。
店内が混雑していて朗読するスペースもない状態のなか、ただでさえ背の高い山田がカウンターバーの上ににょきりと立った。
彼が声を発している頭部を見上げていると首が痛くなるくらいだった。
山田亮太の処女詩集『ジャイアント フィールド』に、書名と同タイトルの詩がある。
風見鶏がくるくると回る土地。
鉄の土地。
ジャイアントが立っている。
その四五度右、遠方に一本の木がそびえ立つ。
ジャイアント フィールド
無論、この「鉄の土地」というのは詩的に仮構された空間なのだが、私はなぜか北海道という土地を思い浮かべた。
書き手が旭川生まれだからというだけではないが、北海道という大地にはどこか外国のようなところがある。
そうやって「ジャイアント フィールド」という詩の象徴性や寓意を分析せずに、ごくごく素直に読んでみるとおもしろい。
北海道にはその歴史性の希薄さから、映画のセットか舞台の書割のようなとこがあるが、この詩における無数のジャイアントがあふれ出てくる「鉄の土地」もそんな空間に思えてくる。
彼らは一体どこから来て、どんな営みを持ち、どこへ向かっていくのだろう。ジャイアントという喩を、単純に「人間」としてとらえるだけでは足りない。
第二連に「鈍く低い土地。/揺れた。/鉄の土地。/ひび割れた。」という一節がある。この土地には厳しさもあるのだ。
頭の上を黒い雲が覆い、無数のシャボン玉が生まれ、バナナの皮が置かれているこの土地に対する、ひとりのジャイアント(書き手)の違和感と、その世界の静かな受容が書かれているようだ。
これはひとりの書き手の出発の詩だと思った。