シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

バウンティハンター ①

johnfante2009-11-21


保釈金制度


賞金首をねらう賞金稼ぎといえば、もはや映画の世界と思うかもしれないが、アメリカでは、現在も日夜バウンティハンターが命をかけて戦っている。
州によっては登録制のところもあるが、無登録で開業できるところもある。私立探偵と同じようものだ。
アメリカの司法システムには「保釈金」(bail)という制度がある。
刑事逮捕された後、裁判所が保釈金を設定する。裁判の日に裁判所に出頭することを条件に、裁判所に保釈金を払えば開放される。
裁判が終わるまでに逃亡しなければ、保釈金は返してもらえる。
 

保釈金は被告が逃亡しないよう、高額に設定される。自分で払えないくらい高額な場合はどうするのか。
保釈保証業者(bail bonds)というところがあるのだ。
そこでは、保釈金の1割程度を払えば、残りは担保保証で全額肩代わりしてくれる特殊なローン業者である。
被告が無事裁判の終了まで逃亡しなければ、業者は全額返金を裁判所からもらい、被告も業者に利息を払って残りは返金する。



(本物の賞金稼ぎに密着するアメリカのリアルTVショー『Dog the Bounty Hunter』)



しかし、犯罪者のなかには、逃亡する人達もいる。そうなると、ベイルボンズ業者も返金がもらえない。
現代のアメリカのバウンティハンターは、そういったベイルボンズ業者から保釈金を借り受けていながら逃亡する、被告を裁判所に連れ戻す私立業者のことである。
バウンティハンターへの支払いは、逃亡者の保釈金の1割が一般的。
たとえば、保釈金が2万5千ドルならば、2千5百ドルがバウンティハンターの収入となる。
場合によっては保釈金の5割程度までが、バウンティハンターに支払われることもある。
裁判所に逃亡者を出頭させることが前提の業務であり、西部劇のように「生死を問わず」ということは、まずありえない。

バウンティハンターの事務所


バウンティハンターとして27年のキャリアを持つ、デュアン・ドッグ・チャップマンは、これまでに6000件以上の捕獲に成功を記した、世界的に卓越された保釈保証人である。
彼自身、前科者であり、かつてはテキサス州の連邦刑務所に服役していた。
「おれの存在は、どんな人間でも更生し、社会復帰できるのだという何よりの証拠」とドッグは話す。
ドッグは敬虔なキリスト教徒となり、今では法を守る立場で、悪人達を連行し、彼らを社会復帰に導くためにたゆみない努力をしつづけている。



アメリカのデンバーで育ったドッグ。ウェズリーとバーバラ・チャップマン夫妻の4人の子供の長男として生れた。
彼の父親はアメリカ海軍の溶接士で、母親は教会の牧師を務め、ゴスペルを指導するためしばしばアメリカ先住民の保留地を訪れていた。
ドッグの事務所はハワイにあり、そこでは妻のベス、次男のデュアン・リー、三男のリーランドがはたらくファミリービジネスとなっている。
ドッグの妻でありビジネスパートナーでもあるベスは、手掛りとなる犯罪者達の情報、令状の収集など、ほとんどすべてのデスクワークをこなし、常に現場にいるドッグを援護し、サポートする。
ドッグの息子であるリーランドとデュアン・リーもまた、チームの重要なメンバーである。
一方、血縁関係ではないが、ティム・チャップマンも、ドッグの血盟の義兄弟として中核のパートナーを担っている。
こうした仲間達の支援なしに、ドッグの任務完了はありえない。