シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

300人を殺したギュスターヴ ①

johnfante2010-02-03


2007年にアメリカで公開された「Primeval」という映画についての実話です。
300人もの人間を殺した殺人鬼に迫ります。


ブルンジ共和国のガツンバ村


中部アフリカのブルンジ共和国は、内陸に位置する小さな国である。ルワンダコンゴ民主共和国タンザニアと国境を接している。
ブルンジ共和国は、アフリカで2番目に大きいタンガニーカ湖(Tanganyika)に面している。
この世界で一番深い水深を誇る湖にそそぎこむ、ルシジ河の河口にあるデルタ地帯に、伝説の殺人鬼が出ると言われている。
実際にこの地帯に面するブジュンブラ(Bujumbura)の浜辺にあるガツンバ村(Gatumba)では、子供を中心に次々と村人たちが殺されている。近年で、その数はなんと300人にもなる。 
ガツンバ村の村人の記憶に残るのは、2004年3月の伝説的な連続殺人である。このときは特に子供ばかりが狙われた。


2004年3月8日 ハリメンシ・フランソワ殺害  享年14歳
3月10日 ムバイチョナンクワ・ピール殺害 若者 
   3月12日 セカマボ殺害 年齢不明
3月14日 ンチムンスビレ・ブウウミ殺害 若者
3月15日 ンダルバヤムオ・ムガボニヘラ殺害 若者


このガツンバ村には古い迷信とタブーがある。先住民たちによって長く言い伝えられてきたものだ。それは「邪な人々を罰するために、超自然的な存在がやってくる」というものである。
あるとき、この殺人者に向けて兵士が発砲したところ、「銃弾を飲み込んだ」とも言われている。
また、ガツンバ村の年をとった呪術師は、この殺人者が捕らえられるように聖なる呪文を唱えている。


犠牲者たち


カツンバ村の住人で、未亡人のニテゲカ・アビヤ(Nitegeka Abiya)は、夫を失った。
その殺人者は、頭に黒い傷痕があるという特徴を持っていたので間違いなかった。彼女は暗い家への入口のそばにしゃがんで、背中に赤ん坊を背負いながら話す。
「私は、正確な日付を覚えていません。しかし、午後3時くらいでした。私の夫のマヨヤ(Mayoya)と私は食事を摂っていました。それから、すぐに戻るよと言って、夫は河に洗濯に出かけました。しばらくして、人々の叫び声が聞こえてきたのです。私はどうしたのかと思い、走って出て行きました。その日は、夫の衣類しか見つかりませんでした」



「Primeval」予告編


3日後、漁師たちがアビヤの夫の頭部を湖で見つけた。彼らはそれを確認のために持ち帰った。夫は35歳だった。アビヤは妊娠していた。
ガツンバ村の住民にとって、人間の突然の死は生活の一部である。川辺で、ハイウェイ沿いで、どこででも殺される可能性がある。
村人たちは深い諦念の心を持って、犠牲者たちのことを追悼する。それから、再び人々は日常生活に戻り、ルシジ河で入浴して、釣りをして、服を洗うのだ。
子供たちは、まるで恐怖の記憶を喪失したかのように、無邪気に河で遊び、泳ぎはじめる。