アルヴィン・ストレイト ①
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
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右写真は本人が実際に使用していた芝刈り機
頑固爺のアルヴィン
アイオワ州の小さな田舎町ローレンス。人口はたったの1400人(2000年現在)。
1994年のこと。アルヴィン・ストレイト(Alvin Straight)は73歳だった。
田舎で農作業などをしながら、のんびりと暮らす、どこにでもいる頑固な爺さんだった。暇なときは、芝刈り機にまたがって庭を行ったり来たりしていれば、彼はご機嫌なのだった。
視力が弱いために、運転免許は持てなかった。足腰も弱っており、家で転倒したために、杖をつかないと歩けないという有り様だった。
長年の喫煙癖により、肺気腫の怖れもあったが、いくら娘のローズに勧められても、頑固なアルヴィンは頑なに医者の診察を拒否するのだった。
アルヴィン・ストレイトは、モンタナのスコービーという街に生まれた。
彼と妻のフランセスは、1973年にアイオワへ家族と共に移ってきた。
最初はレイク・ビューに居住した。アルヴィンは一般的な農場労働者だった。
彼は第二次世界大戦と朝鮮戦争の復員軍人でもあり、5人の息子と2人の娘の父親だった。
今は、社会保障の年金を貰いながら、娘のローズと2人きりで細々と暮らしていた。
映画『ストレイト・ストーリー』
兄が脳卒中で倒れる
7月の初頭。アルヴィンは、彼の兄が脳卒中で倒れたという報せを受けた。
脳卒中にかかった後、病床に伏しているというのだ。
兄のヘンリーは、もう80歳である。ヘンリーとは10年前に喧嘩わかれをして以来、まったくの音信不通で、一言も話していなかった。
「酒も入っていた。怒り、自惚れ。小さなことから言い争いになり、取り返しがつかないことになってしまった」
絶縁状態になり、互いに持ち前の頑固さのせいもあって、10年も連絡をしていなかった。アルヴィンはそれ以来、酒を断っていた。
アルヴィンはどうしても兄に会って、和解したいと願うようになった。
「年の近い兄弟というのはいいものだ。自分を一番良く分かっている。もう一度、モンタナの農場で暮らしていた子供時代のように、一緒に星空を眺めたい」
彼は人生のなかの忘れ物を、どうしても取り戻さないとならないと決意したのだ。
兄が住む隣のウィスコンシン州のマウント・ザイオンまでは、約240マイル(385キロ)の道のり。ミシシッピー川を越えて、車なら1日で着く距離である。
過去に嫌な目にあったので、アルヴィンは公共の輸送機関をまったく信頼していなかった。また、視力が悪くて、運転免許証を持つことを許されず、車を運転することができなかった。
それでも、頑固者のアルヴィンは他人の世話になるのは絶対に嫌だった。
車で送って貰えば、たった1日で会いに行けるのにもかかわらず、彼は絶対に自力で会いに行くと固く心に決めてしまった。