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オバマ新大統領が誕生し、イラク戦争は戦争終結へ向かうのでしょうか。
今回はイラク戦争の戦後を予見する2本の映画を紹介します。
イラク戦後復興へ
2008年3月でイラク開戦から5年を迎え、米兵の死者は4千人を超えた。
侵攻時の人的被害は139名だというから、ほとんどが戦闘終結宣言後の占領下で亡くなっており、完全な泥沼化といっていい状態だ。
この死者の数が多いのか少ないのか、どうもピンとこない。
実感ができるのは、家族を失くした「遺族」か戦地に行った「帰還兵」くらいのものだろう。
その両方の視点から、銃後の人たちを描いたヒューマンドラマの秀作が2本公開される。
『さよなら。いつかわかること』
『さよなら。いつかわかること』のジョン・キューザックは高校時代はスポーツのスターで、アメリカの正義を信じて軍隊に入った保守的な父親だ。
視力のせいで除隊になってホームセンターで働いている。
スポーツや軍隊という「大きな物語」から外れた彼には家族が残されているが、妻がイラクで戦死し、訃報をふたりの娘に伝えなくてはならなくなる。
フロリダの遊園地への旅行を喜ぶ娘たちに、いつまでも切りだせない父親の姿がせつない。
この私的な物語からは「戦闘は終結したはずなのに戦争が終わらない」というジレンマを抱えた社会の、深く傷ついた気分がじんわりと伝わってくる。
『さよなら。いつかわかること』予告編(英語)
『告発のとき』
『告発のとき』では、トミー・リー・ジョーンズが、イラクから帰還して軍から脱走した息子を自分で捜索することになる。
この父親は軍の元憲兵である上に、アメリカ社会では他人は誰も助けにならないことを熟知している。
そんな孤独を抱えた人々を、自由や正義といったアメリカが供給する「大きな物語」が社会的にまとめているのだが、息子の焼死体を見つけ、戦友たちの暴行を知るうちに、彼がアメリカに抱いていた信念は根底から覆される。
彼がSOSを表わす逆さまの星条旗を掲げるラストはあまりにつらい。
本来のアメリカが持つダイナミズムは自由や正義ではなく、多様な意見がいえる空間を確保し、社会が変化することでまちがいを正す復元力の方にある。
これだけ優れた反戦映画が出てきたのは、海のむこうで銃後が終わり「戦後」が始まることの兆しなのかもしれない。
『告発のとき』予告編(日本語版)
映画紹介
ジョン・キューザックの名演が光る『さよなら。いつかわかること 』。妻がイラクで戦死したことを父親がふたりの娘に伝えるまでの物語。クリント・イーストウッドの音楽が心に響く。
- 作者: 古閑万希子,P.,ハギス
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/05/31
- メディア: 単行本
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初出:「週刊SPA!」