シネマの舞台裏2

Yu kaneko(批評家・映像作家)のブログ

フリーダム・ライターズ ①

johnfante2007-07-08

フリーダム・ライターズ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

フリーダム・ライターズ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]


映画『フリーダム・ライターズ』が公開される。
エリン・グルーウェルという実在の女性教師の奮闘を描くドラマで、ヒラリー・スワンクが好演。
エリンが生徒たちと共に書いた本が、全米でベストセラーになり映画化されたもの。
カリフォルニアの人種問題を背景にした、本来ならば重いテーマの映画だが、軽快な編集で随分と観やすい仕上がりとなっている。
(右写真は映画から)


学級崩壊した高校


それは、一人の新米教師と一冊のノートが起こした奇跡の物語…。
ロス暴動から2年後の1994年、ロサンゼルス郡のロングビーチ
低所得者層の多いこの地域では、貧困による憎悪と犯罪がはびこっていた。
黒人、ラティーノ(メキシコからの不法移民)、アジア系(韓国、中国、ベトナムカンボジア移民)、白人など人種が激しく対立し、ドラッグとナイフと銃によって略奪や殺し合いが横行。
それぞれの若者グループは互いの身を守るために、ギャング団を形成して対立しあっていた。


ウッドロウ・ウィルソン公立高校では、登校も下校も命がけ。カリフォルニアの青い空など、見上げている余裕はない。
ロングビーチでは肌の色がすべて。浅黒いか、黄色か、黒か。一歩外に出たら戦場なのよ」
高校1年生、15歳の黒人少女のエヴァは言う。
学校に着いても問題は同じ。みな肌の色ごとに徒党を組み、人種間の憎しみをむき 出しにする。
バッグには銃かナイフ。誰もが卒業までの18歳まで生きられれば、十分だと思っていた。
生徒たちの多くは「戦うか逃げるか」というメンタリティを保持していた。


荒れ果てた教室では授業もままならず、ほとんどの教師たちは貧困層の生徒を見捨てていた。
成績別に進学クラスと、低レベルのクラスに差別化し、進学クラス以外は自然にドロップアウト(中途退学)していくのを、学校側は待つといった状況だった。
それは、92年に起きた人種対立による暴動(黒人対アジア系、黒人対ヒスパニックなど)によってコミュニティが受けた影響だった。
92年から93年にかけて、126人もの若者が対立のなかで命を落としていた。


新米教師エリン



映画の予告編


エリン・グルーウェル(Erin Gruwell)は、カリフォルニア生まれ。
ロングビーチウッドロー・ウィルソン高校で、23歳のエリンは94年に教育実習を開始した。
弁護士になるはずが、「法廷で子供を弁護するのでは遅過ぎる。教室で子供を救うべきだ」と教師になった変り種だった。
教育実習生として、彼女は学校で最も成績の悪い生徒が集まる、フレッシュマン(高校1年)の国語(英語)クラスを割り当てられた。
白人の生徒は一人しかおらず、後は黒人、アジア系、ヒスパニック系の生徒たちから成るクラスだった。


203教室にきたエリンは理想に燃えていた。
しかし、支配階級である白人の女教師など、生徒たちには別世界の住人でしかない。
生徒たちは人種の違う人間の隣に座り、言葉を交わすことすら怖れていた。
そこで教室に入ってくると、机と椅子を動かして、黒人、アジア系、ヒスパニック同士で固まって座った。
シャラウドというギャング気取りの黒人生徒は、エリンにクラスで惨めな思いをさせるように、あらゆる授業妨害を仕掛けてきた。
彼は、前にいた高校で教師を銃で脅したために転校させられた、いわくつきの生徒だった。


エリンは生徒の拒絶にショックを受けつつも、身のまわりの暴力に対して、拳でもなくスプレー缶でもなく、むろん拳銃でもなく、ペンで対抗する術を教えようと決意。
詩の教材に2PACやスヌープ・ドギードッグら、ティーンエイジャーに人気のラップのライム(詞)を取り入れるなどして努力を重ねていく。
だが、生徒たちは教育システムのなかで、置き去りにされていると感じていた。黒人少女のエヴァは、エリンの笑顔の偽善性を見抜いていた。
生徒たちはエリンの努力を嘲笑し、どれくらい続くか賭けをした。
おとなしいエリンのことを馬鹿にして、らティーノのティコと黒人のシャラウドは、授業中に堂々と殴り合いの喧嘩をし、エリンはしばしば用務員の手を借りなければ、それを止められなかった。